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KAMに対するアナリストの視点~「企業会計」2021年12月号~

  • 佐藤篤
  • 2022年1月14日
  • 読了時間: 3分

更新日:2022年1月24日

2022年1月4日の弊ブログのエントリーで、「企業会計」2021年12月号の特集「決算開示のトレンド2021」の「アナリストから見た2021年3月期開示」(以下「当該記事」)という記事を取り上げました。

今回はその時のエントリーで省略したKAM(監査上の主要な検討事項)に係る部分を取り上げます。


以下、当該記事の概要です。


KAMの分析

  • 2021年6月末時点で時価総額500億円以上の3月末決算会社784社を対象に分析を実施した結果、KAMを一個しか選定しなかった会社は全体の6割以上を占めた。一方で3個以上を記載した会社は60社と全体の7%にとどまった。

  • 平均個数でいえば、時価総額が大きくなるほど平均個数も多くなる傾向があった。

  • 監査法人によるばらつきはなかった。

  • 項目別で最も多かったのは資産価値評価(減損判定含む)で全体の3割を超え、続いて収益認識。

  • 英国やシンガポールでは平均2個以上という報告が出ていることを踏まえると、一個では物足りないというのが財務諸表利用者としての心情である。

  • 好事例として、減損テストにおける回収可能価額が帳簿価額を上回る金額(余裕度)を開示しているケース、KAMの算定にあたり候補となった検討事項の相対評価表を開示しているケースがあった。

KAMに係る今後の課題

  • 前年度の記述から財務数値を変えただけで、文言がほぼ同じとなる記載の定型化問題。

  • 株主総会前の開示

KAMは株主総会で報告される事業年度の財務報告に関するものであり、また当該株主総会で選解任決議される会計監査人によって作成されているため、総会前に開示されることが望ましい。そのためには株主総会前に有価証券報告書を提出する、または会社法監査報告書にKAMを任意適用する。


感想

とある上場会社の経理部に勤める知人から「KAMはゼロでも問題ないよね?」と尋ねられたことがあります。

それに対して、例えば売上先が親会社だけで、形式上会社法の法定監査が必要な上場会社の子会社のように監査上のリスクがかなり低い企業であればKAMがゼロでも問題ないケースもあるかも知れないが、上場会社であればKAMがゼロというのは考えづらいし、会計監査人の立場として、KAMゼロはきちんと監査していない印象を財務諸表利用者に与えてしまうので容認できないだろう、という趣旨の回答をしたことがあります。


この点、KAM一個が全体の6割という調査結果は、クライアント企業と会計監査人の力関係と上記の会計監査人の立場の折衷による落ち着きどころという気がします。

そうであれば、当該記事で心配されている翌年度以降の記載の定型化問題も大いに起こり得ると考えています。



また、株主総会前に有価証券報告書を提出することはクライアント企業が嫌がります。株主総会での株主からの質問ネタを余分に提供することになるからです。そういう意味では、会社法監査報告書へKAMを任意適用する方が多少現実味はありますが、今度は会計監査人側が嫌がりそうです(笑)

 
 
 

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