監査人の交代に関する考察~「会計・監査ジャーナル」2025年8月号~
- 佐藤篤
- 8月26日
- 読了時間: 2分
「会計・監査ジャーナル」2025年8月号の連載「実証監査研究入門」の第4回は「監査人選択研究の解説」(髙田知実)でした。
以下、当該論考で引用されていた研究結果の解釈部分と、コラム部分です。
Francis and Wilson (1988)
株主と経営者、及び株主と債権者の間で生じる利害対立と情報の非対称性の問題に着目し、それらに起因して生じる信頼性の高い財務報告に対する需要という観点から、規模の異なる監査事務所に変更する際の決定要因を分析している。
分析対象となった変数に関して、以下の2つの解釈を導き出すことができる。
会計情報に基づく経営者インセンティブ報酬契約の付与状況により、信頼性が高い財務情報の重要性が高まった企業では、規模の大きな監査事務所への変更傾向がみられる。
筆頭株主の持株比率が上昇し、株主分散の程度が低下した企業では、経営陣への直接的な監視や統制が強化される結果、財務情報の信頼性に対する需要が低下し、規模の小さな監査事務所へ変更する傾向がある。
上記の解釈における下線部分は、あくまで結果から推測される背後のメカニズムであり、実際には、異なるメカニズムが作用し、観察された関係が生じている可能性は否定できない。
監査事務所の自発的な交代はなぜ起こりにくいのかに係るDeAngelo(1981)の説明
監査人は監査を実施するためのクライアントに関する知識を習得する必要があり、これには初期コストがかかるが、このコストを一度負担した監査事務所は、その後、コスト面で他の監査事務所に対する優位性を持つことになる。
クライアント企業にとっても、現在の監査事務所へ特段の問題がない限り、追加的なコストを負担してまで監査事務所を変更する動機は低いと考えられる。
感想
監査事務所の交代におけるコスト面の影響は大きいと私も思っています。
特に大手から中小への監査事務所の変更は、表向きはともかく、ほぼ監査報酬の低減目的で行われているような印象があります。
会計監査報酬は、いわば「金を生まない」コストと捉えられることが多く、株主と経営者が低く抑えたいと考えるのは、ある意味当然のことだと思います。
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