監査報酬に影響を及ぼす要因~「会計・監査ジャーナル」2025年6月号~
- 佐藤篤
- 7月8日
- 読了時間: 2分
「会計・監査ジャーナル」2025年6月号の連載「実証監査研究入門」の第2回「監査報酬研究の解説」(高田知実)を読んでおりました。
高田先生は第2回の内容について、以下のように述べられています。
監査報酬を研究対象とする意義とともに、Francis(1984)を例に、監査報酬が従属変数となる回帰モデルの構造と結果の解釈を説明した。
上述のようにFrancis(1984)を例に研究の過程を解説されているのですが、Francis(1984)自体の結果が面白かったので、高田先生の論考の趣旨からはズレてしまうのを承知で、取り上げてみます。
まず、回帰モデルの変数について、以下のような説明がなされています。
回帰式においては、説明の対象となる変数を従属変数(目的変数や被説明変数と同義)、それを説明するための変数を独立変数(説明変数と同義)とよぶ。
上記を踏まえ、Francis(1984)では、常用対数変換後の監査報酬を従属変数としています。
一方で、独立変数は以下の通りです。
常用対数変換後の総資産
子会社数の平方根
流動資産比率(=流動資産/総資産)
当座比率
自己資本負債比率
利益率(=当期純利益/総資産)
過去3年間に損失計上があれば1を取るダミー変数(それ以外はゼロ)
修正監査意見の場合に1を取るダミー変数(それ以外はゼロ)
6月末(注;オーストラリアは6月末に決算日が集中している)が決算期末である場合に1を取るダミー変数(それ以外はゼロ)
大手監査事務所(ビッグ8)の場合に1を取るダミー変数(それ以外はゼロ)
そして結果ですが、総資産、子会社数、流動資産比率、および大手監査事務所が、監査報酬に対して統計的に有意な正の関係を有していたとのことです。
Francis(1984)は40年以上前のオーストラリアの研究であるにも関わらず、概ね今の私の直感通りの結果だったのには驚きでした。
ただ、会計監査ビジネスの構造は昔から(恐らく)大きな変化がなく、その点を考慮すれば納得感のある結果でもあります。
自己資本負債比率については、通信業や電力業のように比較的景気に左右されずにキャッシュ・フローの獲得が期待できる業種では、負債比率を高める方が資本コストを低く抑えられるため、統計的に有意にならないのも理解できます。
一方で流動資産比率と当座比率で結果が異なっている点については、上手い説明が思いついていません。
「安全性の問題ではなく、損益分岐点の問題なのか?」等いろいろ思考を巡らせています。
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