株主優待制度の活用~「企業会計」2025年11月号~
- 佐藤篤
- 2025年12月2日
- 読了時間: 3分
「企業会計」2025年11月号の特別企画は「これからのスタートアップ・ファイナンス」でした。
その中の『スタートアップIPOの「小粒問題」と株主優待制度の戦略的活用』(忽那憲治、大野麻衣子)を読んでみました。
小規模な上場企業と株主優待制度
日本の株式市場では、個人投資家による売買比率が依然として高い。このような市場構造は日本特有のものであり、特に小規模な上場企業にとっては、機関投資家の投資対象として十分な関心を得られにくく、個人投資家との関係性を戦略的に構築する必要性が高くなる。
株主優待制度は、こうした個人投資家との関係性構築において、一定の効果が期待できる手段として活用されることが多いことに加え、企業の情報発信力が限られるステージにおいて、IR代替手段としても有効である
導入状況と効果
2024年9月時点で全上場企業の約3分の1に相当する1,494社が株主優待制度を実施している
導入の効果として7割超の企業が個人株主数の増加を挙げている
バリュエーションについて、特に時価総額100億円以下の小規模企業において相応のPER上昇を観測したとの研究結果あり
株主優待制度の実務的メリット
配当とは異なり利益剰余金を原資とする必要がないため、赤字企業でも導入が可能
内容によっては費用が税務上販管費として損金算入される場合がある
個人投資家の中でも、転居や手続き忘れなどにより優待を実際に受け取らないケースも一定程度存在するため、実利用率が100%にならない
株主優待制度の多くは非累進設計や上限付累進設計となっており、創業家等の大口の長期保有株主が存在する場合、それらの保有分に対しては株主優待の実施負担が限定的なものとなる
BtoC企業にとっては、自社製品を用いた株主優待は企業のブランド訴求や認知度向上を目的とした広告宣伝機能を兼ね、IR費用の代替手段として有効
株主優待制度に対する批判的視点
株主優待の内容が株数比例でない場合、株主平等原則に反する可能性がある
資本効率(ROEやROIC)への直接的な寄与が限定的である
株主優待利回りによる株価維持が過熱することで、企業価値の実態と乖離した評価が形成され、結果として大株主のイグジットや公募増資など資本政策上の重要局面において、大口機関投資家の受け皿が不足する可能性
株主数が想定を上回って増加した場合、制度の維持コストが企業の当初の想定を大幅に超過し、経済的負担となり得る
株主優待制度が有効な企業類型
株価が割安に放置されている企業
政策保有株主が存在し、イグジット機会の提供が重要な局面において、新規投資家を呼び込みたい企業
業績の変動が大きく、安定的な配当政策が困難な企業や、一時的な赤字や業績悪化に直面している企業
IR活動にかける予算や人的資源が限られている企業(特にBtoC企業)
留意すべき点
株主優待目的の短期売買による株価の乱高下を抑えるためには、継続保有条件の導入が効果的
対象株主を絞り込むことで制度コストを抑制可能
企業の成長ステージや投資家構成の変化に応じて、「導入・活用・縮小」までを計画的に設計すべき移行型制度として捉えることが肝要
松浦(2023)の分析によれば、2010~2021年に優待を廃止した上場企業77社のうち、自社製品型(N=28)では廃止年度の個人株主数減少率が9.8%だったのに対し、非自社製品型(N=49)では29.9%減と3倍規模の離脱が確認されている
感想
イオン株式会社の株価が凄いことになっています。
先週末(11月28日)時点の終値ベースでPERが186.88倍と、AIスタートアップのようなバリュエーションです。
この要因は株主優待制度にあるらしく、内容をみてみたところ、確かに普段イオンを利用している方にとっては魅力的な優待でした。
株主優待の個人投資家への訴求力を見せつけられているような気がしました。
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