景気減速下での海外子会社の期ズレ連結
- 佐藤篤
- 2022年7月29日
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2023年3月期第1四半期を主に、決算発表が連日続いております。
7月27日には信越化学工業株式会社(以下「信越化学社」)が決算を発表しており、前年同期比で51.2%の増収、営業利益で93.8%の増益となっていました。
円安効果があったとはいえ、想像を超える好決算です。
一方で、2022年の4月から6月は半導体需要の頭打ちや米国の住宅需要の低下といった要因があり、信越化学社の業績にとって逆風だったはずと思っていたので、今回の好決算にはかなりの意外感がありました。
この点について、7月28日のテレ東モーサテで解説されておりました。
信越化学社にはシンテックInc.(以下「シンテック社」)という米国の子会社があります。
このシンテック社は塩化ビニル樹脂の製造・販売を行っており、米国の住宅市況の影響を受けるのですが、信越化学社の2023年3月期第1四半期決算上、シンテック社については2022年1月〜3月末までの業績が連結されているとのことです。
2022年の1〜3月は4〜6月程米国の住宅市況が悪化しておらず、塩化ビニル樹脂の需要も相対的に堅調だったため、その点は割り引く必要があるとの解説でした。
実際に信越化学社の2022年3月期の有価証券報告書で連結子会社の事業年度等に関する事項の記載をみてみると、確かに個々の決算日が連結決算日と異なる会社としてシンテック社の名前が記載されていました。
この3か月の期ズレですが、会計基準上も認められている処理です。
企業会計基準第22号『連結財務諸表に関する会計基準』の「(注4)決算期の異なる子会社がある場合の取扱いについて」に以下のように規定されています。
子会社の決算日と連結決算日の差異が3か月を超えない場合には、子会社の正規の決算を基礎として連結決算を行うことができる(以下省略)。
今回の信越化学社の好決算、意外感を感じつつも感心していたのですが、今回のような急速な利上げ局面では海外子会社の決算日のズレにも気を付けなくてはならないのだな、と勉強になった次第です。
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