公認会計士試験のバランス調整~「会計・監査ジャーナル」10月号~
- 佐藤篤
- 3 日前
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「会計・監査ジャーナル」10月号に掲載されていた「公認会計士試験のバランス調整の概要について」(蟹江章)を読んでみました。
公認会計士試験の現状
公認会計士試験の出願者数は、最近では2万人を超える水準まで増加し、非常に競争性の高い試験となっている
(短答式試験)
目的
基本的な問題を幅広く出題することにより論文式試験を受験するために必要な知識を体系的に理解しているか否かを客観的に判定すること
問題点
合格率が低すぎることや、1問あたりの配点が高い問題が合否に与える影響が大きいこと等から、必要な知識を体系的に理解していても合格できない者が多数生じる状況にある
(論文式試験)
目的
思考力、応用能力、論述力等を有するかどうかに評価の重点を置くことにより、公認会計士になろうとする者に必要な学識及び応用能力を公認会計士試験として最終的に判定すること
問題点
合格率が比較的高いことや科目によっては記述問題の分量が減少していること等から、必要な思考力や応用能力等を十分に訓練できていなくても合格し得る状況にある
試験のバランス調整の目的
上記の問題点に加え、公認会計士や公認会計士試験の合格者に求められる知識や能力も拡大・多様化していることから、法令で規定されている現行の試験制度のもと、より的確に受験者の能力を判定できるようにすること
試験のバランス調整の内容
短答式試験の合格者数を増加させる一方、論文式試験の合格基準となる得点比率の水準を、現状の52%から54%に段階的に引き上げることにより、論文式の合格率を現状の30%台後半から20%台後半に低下させることを想定(平成9年試験より実施)
短答式試験の計算問題のある科目では、試験時間の制約から問題数が少なくなっており、1問あたりの配点が高く、これらの問題が合否に与える影響が大きい状況となっているため、問題数を増やして1問あたりの配点の差を縮める。それに伴い、各科目の試験時間を調整する。(平成8年試験より実施)
論文式試験の一部の科目においては記述量が少ない(論理展開が必要となるような記述量の問題が出題されていない)状況が見られることから、一定の記述量を求める問題を出題していく(平成8年試験以降、随時対応)
論文式試験の選択科目では、試験勉強の負担が相対的に少ない経営学をほとんどの受験生が選択している一方、他の科目では得意な人だけが選択するため素点の平均点が高く、これを偏差値と同様の方法で得点比率に換算すると点数が下がってしまう状況にある。このため、どの科目を選択したとしても公平に能力評価が行われるよう、得点換算方法等について検討する
会計・監査の科目において、英語による出題について検討していく。この際、まずは短答式試験において出題することが考えられる。
有価証券報告書におけるサステナビリティ開示基準に基づく情報開示と、それに対する保証に関して検討が進められていることを踏まえ、関連する出題についても検討していく
監査手続でのITの活用や被監査会社でのDX化の進展を踏まえ、ITの活用に関する出題についても検討していく
感想
大手監査法人でパートナーを務めている知人が、ジュニアやシニアの論理性の低さを嘆いていたことがあるのですが、そういった質の問題への対応としては正しい方向に向かっているように感じます。
一方で、そもそも現状のような状況に陥ったのは、志願者増加→論文採点の負担増→短答式試験難易度↑という経緯があったと思うのですが、今般のバランス調整による論文採点の負担増にどう対応するのだろうという疑問もあります。
ひょっとしたらAIが用いられるのかも、なんて想像しましたが、意外とありえない話でもないのかも知れません。
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