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「政府規制時における企業・規制当局の対応」~「企業会計」2023年12月号~

  • 佐藤篤
  • 2024年1月12日
  • 読了時間: 3分

「企業会計」2023年12月号の「政府規制時における企業・規制当局の対応」(島田佳憲)を読んでみたところ、なかなか面白かったので、今回取り上げたいと思います。

 

当該記事は「企業が、政府規制の導入によって影響を受けると予見されるとき、どのような会計行動をとるかを実証的に明らかにした研究」と「規制側の分析として、会計規制に関わる規制当局が、政治的なつながりを持つ企業とどのように対峙しているかを検証した実証研究」の紹介を目的としたものです。

 

研究内容1

企業が保護関税を申請するにあたり、政府による調査期間中に利益を調整しているかどうかの解明。

(結果)

  • 保護関税申請企業は、保護が受けられるように調査期間中に裁量的会計発生高を利用して下方に利益を調整していることが発見されている。

 

研究内容2

アウトソーシングにより高収益を上げている企業の、米国議会選挙前の会計行動に関する研究。

アウトソーシング規制法案成立を回避することを目的に、利益圧縮を試みると想定。

(結果)

  • アウトソーシング委託企業は、2004年選挙直前の2四半期にわたり、会計的裁量行動を通じて利益を圧縮していたことが明らかになった。

  • アウトソーシング委託企業が立候補者に献金している場合、より積極的に利益を圧縮することも発見された。立候補者が国民・メディアからの批判対象となって落選してしまわないように企業が利益を圧縮することは、双方にとって合理的な会計行動である。

 

研究内容3

財務諸表の虚偽記載に対するSECによる処罰の程度と政治的つながりの関係の調査。

虚偽記載を行った企業と政治家との間に利己的な関係がある場合、政治家がSECへ圧力を強めることで、SECが虚偽記載企業を訴追しなかったり、仮に訴追したとしても課徴金が減額されたりする可能性があると予想。

(結果)

  • 上記の予想と整合する検証結果が報告されている。さらに長期にわたる献金やSECへの圧力をかけられる立場の政治家への献金がより効果的であることも発見された。

 

研究内容4

政治献金実施企業と、SECによるコメントレター送付の関係に関する研究。

コメントレターはSECによる公開企業の提出書類の審査の過程において疑問が生じた場合に企業に送付されるもので、企業はそれに対して回答を送付する。

コメントレターに関連してSECによる処罰はめったに生じない。

(結果)

  • 政治献金実施企業はSECからより多くのコメントレターを受け取ることが確認された。また、照会内容も企業が回答に多くの日数を要するトピックであったり、審査プロセスにSEC上級職位スタッフが関与するケースが多いことも確認された。

 

感想

いずれも予想通りの結果ではありますが、面白く読みました。

特にSECのコメントレターに関する研究は示唆に富んでいるなあ、と思います。

日本の規制当局を対象にした研究も、もし存在するのであれば、みてみたいものです。

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