M&Aにおける株式譲渡契約書の特徴~「企業会計」2025年11月号~
- 佐藤篤
- 12月5日
- 読了時間: 3分
「企業会計」2025年11月号の連載「経理パーソンの仕事に役立つ法律知識」(平木太生)の第4回「株式譲渡契約書」を読んでみました。
M&Aを前提とした株式譲渡契約書
買い手としては、子会社化した後に対象会社に多額の簿外負債が発覚するなど、思いもよらぬ事象が出てきた場合のリスクを低減したい
売り手としては、確実に契約を締結し、売却代金の入金をしてもらうとともに、株式譲渡後に買い手の責任で生じた損害まで負わないようにしたい
これらの要因から、M&Aにおける株式譲渡契約書は、通常の契約よりも複雑で高度な条項が多く含まれる
目的
種類株式がある場合には種類株式の内容を、株券を発行している場合は株券番号などで対象物を特定する必要がある
契約締結日とクロージング日(決済日)の間に相当程度の期間がある場合には、当該期間中の株価の変動について調整する「価格調整条項」を加えることが多い
前提条件
株式譲渡契約においては、多くの場合、一定の前提条件を売主及び買主のいずれもが満たした場合のみ取引が実行されるという条件が付される
具体的に付される条件としては、表明保証(後述)が正確であること、本契約に基づく義務の履行、許認可等の取得が完了していることなどが挙げられる
表明及び保証
表明保証とは、契約当事者の一方が、他方当事者に対し、主として契約の対象物等の内容に関して、一定時点における一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、保証することをいう
譲渡人としての表明保証としては、譲渡人(株主)自身に関する表明保証と、譲渡人が運営してきた対象会社に関する表明保証がある
対象会社に関する表明保証には、財務諸表が適正に作成されていることや、税金の支払いが適切に行われていること、労務管理が適切に実施していること等が含まれる
誓約事項
株式譲渡契約においては、クロージング前に遵守しなければならない事項と、クロージング後に遵守しなければならない事項も入れることが多い
具体的には、クロージング後一定期間の競業避止義務、サービスを提供する役員や従業員の引き抜きの禁止、引き継ぐ従業員の雇用関係維持等がある
補償
当事者の一方が本契約の義務に違反した場合に、相手方に生じた損害を填補すること
対象として特に重要なのは、表明保証違反
表明保証した条項に違反が見つかった場合、当事者としては、クロージング前であれば前提条件が満たされなかったとして取引を中止する方法、クロージング後であれば本件契約を解除する方法、そしてクロージング前後いずれにおいても、金銭的な保証を求める方法がある
株式譲渡契約の締結交渉においては、いつまで/いくらまで補償を行うかの交渉がメインとなることが多い
感想
会計監査に従事していても、案外M&Aに出くわす機会は多くなく、こうして解説を読んでみると「そういえばこんな感じだったな」といろいろ思い出されました。
コメント