希望退職を実施する場合の留意点~「企業会計」2025年9月号~
- 佐藤篤
- 10月3日
- 読了時間: 3分
「企業会計」2025年9月号「相談室Q&A」の「会社法務」は「希望退職の進め方とリスク回避の留意点」(澤和樹)でした。
個人開業している私には、直接の関係はない話ですが、好奇心から読んでみました。
希望退職とは
早期退職制度のように会社の中に恒常的に存在するものとは異なり、一定の応募期間や応募条件等を定めて実施されるものを言う
希望退職は整理解雇における解雇回避措置に含まれるため、整理解雇も視野に入っている場合、今回行う希望退職が解雇回避措置として十分かという視点が求められる
任意の退職者を募集する手続であるため、会社が従業員に退職を強制することはできない
対象者の範囲
国籍、信条または社会的身分(労基法3)、性別(労基法4、均等法6四)、組合員であること(労組法7)等による範囲確定は法令上禁止されている
裁判例の中では、会社による恣意的な判断がなされるのではなく、一定の客観性を持った合理的な選別基準を有することを必要としているものがある点に注意
留意点
希望退職の法的な整理としては、会社が承諾を行うことにより、会社と従業員との間で雇用契約の合意解約がなされる(従業員からの応募は合意解約の申込みにすぎない)というものが一般的で、その旨を明示して希望退職の募集を行うことが適当と考えられる
恒常的な早期退職制度等を設ける場合には就業規則による規定が必要となるが、希望退職については、あくまで臨時的なものであるため、就業規則による規定までは不要
労働施策総合推進法は「事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者」が生じる場合において、会社に一定の義務を課しているが、これは希望退職の場合にも当てはまるものと解されている
高年齢者雇用安定法においても、労働施策総合推進法に類似の規定がなされている
原則として労働組合とのやりとりは不要だが、会社によっては、労働協約において、人員削減の場合における、労働組合との事前協議や労働組合による事前承諾が必要とされていることがある
希望退職における紛争防止等の観点から、従業員に対する説明会や質疑応答の機会を設けることも考えられる
裁判例に、一定の場合に会社が承諾したものと推認できるとしたものがあるため、会社として不承諾の場合でも、従業員に対して書面通知等による意思表示をすることが肝要
希望退職の適用範囲を指定するだけでなく、定員を設定した上で、定員を上回る場合には募集を打ち切る可能性がある旨の明示をする(不承諾従業員の発生を最小限にするため)
感想
労働施策総合推進法、高年齢者雇用安定法なる法律があること自体初めて知りました。
法的な制約だけでなく、判例による制約も見落とせないなと感じました。
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