人事評価におけるキャリブレーション委員会~「企業会計」2024年4月号~
- 佐藤篤
- 4月25日
- 読了時間: 2分
2週間程前の弊ブログで、人事評価における主観的評価に係るバイアスの問題を取り上げましたが、その続きとして今回は「企業会計」2024年4月号に掲載されていた「バイアス是正のためのキャリブレーション委員会」(森光高大)を取り上げます。
キャリブレーション委員会とは
複数人で協議し最終的な評価を決める形態のこと
近年、主観的評価を維持した上で、評価の歪みを是正するための試みとして注目を集めている
キャリブレーション委員会の効果
評価の透明性を向上させ、誤った評価を修正する場として機能し、従業員の評価に対する不確実性を軽減させる
現場の管理者が恣意的に歪んだ評価を行えば、キャリブレーション委員会はその管理者の評価を下げ、部下のパフォーマンスを適切に区別(分散の大きい評価を提供)するスキルを持つ管理者は、昇進の可能性が高くなる。一次評価者である現場の管理者を評価する役割が期待できる。
キャリブレーション委員会によるバイアス
キャリブレーション委員会は、情報の優位性を持つ現場の管理者に意思決定を任せる傾向が見られ、現場の管理者の評価結果を修正したのは全体の25%ほどであった(大規模多国籍企業の内部監査部門の人事評価データを用いた実証研究の結果)
キャリブレーション委員会による修正は、上方修正よりも下方修正の方が多く、妥当な水準よりも甘い評価がついてしまう「寛大性バイアス」が軽減される一方で、評価の分散を小さくする「中心性バイアス」が促進される傾向にあることも指摘されている
被評価者である従業員の実際の仕事ぶりをよく知らない上司まで参加することで、年齢や性別、人種等個人の属性に関する情報によって評価が歪められてしまう結果、特定のグループは他のグループよりも自身の価値を証明する必要が多くなる「再証明バイアス」が生じることが指摘されている
感想
主観的評価に係るバイアスを修正する試みとしては、イメージしやすい方法のような気がします。
副次的な効果なのかも知れませんが、一次評価者の能力評価になるというのは面白いと思いました。
一方で、個人の属性による評価の歪みを是正できないという点には限界を感じさせられます。
お酒の品評会のようにブラインドで評価できればいいのですが、人事評価に関してはそうもいかないのが悩ましいところです。
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