重要性が高まったことによる持分法の適用~会計監査ジャーナル2021年9月号「会計相談Q&A」~
- 佐藤篤
- 2021年8月31日
- 読了時間: 2分
会計監査ジャーナルには「会計相談Q&A」という連載あります。
この連載の2021年9月号の内容は重要性が高まったことによる持分法適用会社の過年度損益の会計処理についてでした。
過年度損益(取得後増加利益剰余金)をどのように会計処理すべきか、という論点なのですが、この記事を見た時は「これ基準書に書いてあるでしょ」と瞬間的に思いました。
しかし、そもそもこの「会計相談Q&A」は基準書で明確になっていないけれども実務上よく発生する論点について検討解説するのが目的(のはず)であり、ここで取り上げられているということは基準書上そのものズバリの記載がないということを意味します。
そこで、実際に「持分法会計関する実務指針」(企業制度委員会報告第9号)を確かめてみると、確かに重要性が高まったことによる原価法から持分法への変更の場合の会計処理に関する記載はなく、似たような論点として株式の段階的取得に伴う取得後利益剰余金の会計処理の取扱があるだけです。
実務上はこの取扱を重要性が高まったことによる持分法適用の会計処理に準用してきたということで、時々こういった理解違いをしていることがあります。
まあ、会計処理について勘違いしていた訳ではないので、問題はないのですが。
ところで、重要性が高まったことによる原価法から持分法または連結への変更で問題になるのは、上記の過年度損益の取り込みよりも寧ろ”のれん”相当額算出のための時価評価(評価差額算定)の方です。
株式の段階的取得により持分法または連結へ変更になる場合と異なり、株式の取得自体は過年度に行われており、持分法または連結への変更期まで相当の期間を経過している場合、過年度の株式取得時の資料が残っておらず、株式取得時の時価の把握が著しく困難になるという問題が生じることがあります。
特に期末至近になって持分法適用又は連結対象にする必要性が判明した場合は時間的制約が大きな障害となって立ちはだかってきますので、早目に会計監査人に相談されることをお勧めします。
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