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気候変動関連開示の現状~「企業会計」2021年8月号の特集記事を読んで~

  • 佐藤篤
  • 2021年8月3日
  • 読了時間: 2分

最近気候変動とか脱炭素とか世の中騒がしいですが、我々会計士にはあまり影響のないことと高を括っておりました。

ところが「企業会計」2021年8月号で「サステナブルな企業経営の重要課題!気候変動の情報開示」と題された特集が組まれており、気候変動に関連する開示のみならず、監査・保証という会計士の本業にまで影響しそうとのことで、早速当該記事を読んでみました。


1.EUでの動き

気候変動関連リスクの開示については以下の3つがメインに検討が進められています。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)

気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)

EUタクソノミー

EUタクソノミーについては2022年初めから一部適用予定で、これを受けて世界の主要な金融機関は新設の火力発電所建設に対する新規融資の停止を宣言しているようです。


2.IASBの動き

IASBは2020年11月IFRS Developments第177号「気候関連事項の財務諸表への影響」をリリースしていて、財務諸表への表示から、資産の減損、金融商品開示といった個別項目において、気候関連事項の影響が重要となる場合には、それぞれの項目でその影響を評価し開示する必要性が述べられています。


3.日本での動き

日本ではコーポレートガバナンスコードでプライム市場上場企業を対象に、気候変動に係るリスクと収益機会についてTCFD提言に準拠した水準での情報開示を推奨する、という状況です。

尚、改訂コードは年3月決算会社の進行期より既に適用になっています。


4.決算・監査の海外での現況

パリ協定の目標に適合する仮定や見積を財務諸表数値に反映させることとし、財務諸表数値に反映させない場合には仮定と見積を注記するという実務が既に行われています。そして、それらの開示がない場合は会計監査人が監査報告書にKAMとして記載する場合があり、実際にShell社やBP社の2019年度の監査報告書にはそれに関連したKAMが記載された実績があるようです。

試しに日本の石油会社(エネオス㈱、出光興産㈱、コスモエネルギーホールディング㈱)の直近の有価証券報告書をみてみたのですが、気候変動に関連したKAMは会計監査人の監査報告書には記載されておりませんでした。


5.感想

正直言って、国際的にここまで決算・監査実務が進んでいるとは知りませんでした。

日本ではKAMで対応するというのはもう少し先になる気がしますが、少なくとも「その他の記載内容」に係る監査報告書への記載は進行期から必要となる訳でして、そこに気候変動リスク関連の開示がなされている場合は会計監査人も何も知らないでは済まされなくなります。

引き続き気候変動関連開示には注意を払っていく必要がありそうです。


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