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訴えた側と訴えられた側の会計処理と開示

  • 佐藤篤
  • 2022年8月5日
  • 読了時間: 2分

決算発表シーズンも中盤を迎え、様々な会社の決算短信サマリーをざっと眺める日々です。


今回の決算は増収減益が多い印象です。急激な円安で売上も伸びているものの、原材料仕入価格も高騰している影響と思われます。


そんな中、昨日は三井不動産株式会社(以下「三井不動産社」)の2023年3月期第1四半期決算短信サマリーを眺めていたのですが、驚くほどの増収増益決算でした。

前年同期比の連結ベースで売上高は28.5%増加、営業利益は119.6%増加、経常利益は135.9%増加となっています。

一か月程前に都内オフィスビルの供給過剰がネット上で話題になっていたことがあり、実際に都内のオフィス空室率は上昇しているので、正直ここまでの好決算は想像していませんでした。


この好決算の要因を確認しようと決算短信の中身を見てみたのですが、経営成績や財政状態に関する説明はなく、目次の直後に連結財務諸表という構成になっています。最近こういうパターンが増えたなあと思いつつ、ざっと連結財務諸表と注記を眺めていると、偶発債務に関する注記がありました。

内容は三井不動産社の連結子会社である三井不動産レジデンシャル株式会社(以下「レジデンシャル社」)が分譲したマンションの杭に関する不具合の補償負担に関するものです。

当該マンションは結局全棟建替が実施されたのですが、レジデンシャル社で負担した額のうち約509億円を施行会社である三井住友建設株式会社(以下「三井住友建設社」)と杭施行を行った2社の計3社へ請求するということのようです。従ってレジデンシャル社の既払額は流動資産に計上されています。


なかなかの金額ですが、請求された側はどう会計処理しているのか気になって、三井住友建設社の2022年3月期有価証券報告書を確認してみました。

三井住友建設社では既に偶発損失引当金を計上していました。ところがその金額は約21億円に留まっています。3社で負担するとはいえ、509億円とはかなりの開きがあります。

この点、三井住友建設社は以下のように説明しています。

レジデンシャル社の請求は、根拠、理由を欠くものであると考えており、引き続き裁判において、当社の主張を適切に展開してまいりますが、本裁判の結果次第では、費用負担の見積りの見直しにより、当社の業績を変動させる可能性があります。


この裁判がどう転ぶか、私には知る由もありませんが、結果次第では三井不動産社、三井住友建設社のいずれか若しくは両方に多額の損失が発生する可能性があることは留意しておく必要がありそうです。

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