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偶発事象の開示~三菱電機㈱の2022年3月期第1四半期決算短信を読んで~

  • 佐藤篤
  • 2021年8月17日
  • 読了時間: 3分

更新日:2022年3月1日

先週の話になりますが、朝の経済ニュースを視ていたところ、三菱電機株式会社の2022年3月期第1四半期の決算がとても良い内容だったというニュースが放送されました。

どんな決算だったのだろうと興味が湧き、早速決算短信を見てみました。

売上高は前年同期比24.3%の増加、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比245.7%の増加とニュースの通り、かなりの好決算でした。


一方で当該好決算を受けても株価には目立った動きはなさそうでした。

おそらく、今年6月に判明した鉄道車両空調検査不正に係る偶発債務が決算数値と業績予想数値に織り込まれていないからだろうと想像したのですが、どうやらその通りで、決算短信にしっかりその旨の記載がなされていました。


この偶発債務を含む偶発事象については、日本には会計基準が存在せず、2019年5月27日に会計制度委員会研究報告第16号「偶発事象の会計処理及び開示に関する研究報告」(以下、研究報告#16)が日本公認会計士協会からリリースされているという状況です。

この研究報告、所謂会計基準ではないため、会計監査実務を拘束する性質のものではなく、実際その旨が明記されていて、あくまで一つの参考として利用すべき性質のものです。


一方で偶発事象の一つである債務保証及び保証類似行為については、監査・保証実務委員会実務指針第61号「債務保証及び保証類似行為の会計処理及び表示に関する監査上の取扱い」(以下、監保実#61)が存在しています。

上述の通り、偶発事象全般を取り扱っている会計基準が存在しないため、実務上は債務保証及び保証類似行為以外の偶発事象を会計処理する際の参考に用いられることもあります。


通常、偶発債務の会計処理は研究報告#16、監保実#61を参考にすると、

①開示不要→②偶発債務の注記→③引当金計上

という流れで事態が進展する毎に会計処理されますが、三菱電機㈱については現状②の段階にあるという状況です。

何等かの補償を行わなければならない可能性は高いが、その金額は現状見積もることができない、ということです。


この②偶発債務の注記、実務的には文言にかなり神経を使います。

特に係争となっている場合は、下手な記載をしてしまうと、それが原因で相手方に有利な状況になりかねないためです。

この点IFRSでは、IAS第37号第92項で開示免除規定を設けていて、企業の立場が著しく不利になると予想できる場合、係争の全般的な内容と情報を開示しなかった旨及びその理由を記載した上で、開示を免除するというような配慮がなされています。


今回取り上げた三菱電機㈱とは関係ありませんが、日本でもこのような取扱が認められると、企業側も会計監査人側もやりやすいだろうなあ、と思う今日この頃です。

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