税理士が税理士業を引き継いだ対価に対する所得税課税~「会計・監査ジャーナル」2024年12月号~
- 佐藤篤
- 2024年12月17日
- 読了時間: 2分
更新日:6月25日
「会計・監査ジャーナル」2024年12月号の「租税相談Q&A」は「税理士が税理士業を税理士法人に引き継いだ対価に対する所得税課税」(關場修)でした。
弊事務所は税理士業を行っていないこともあって、当ブログで税務関連ネタを取り上げることは少ないのですが、個人的に意外性が高かったので、取り上げることにしました。
論点
税理士業を営むAが、その子であるCが代表であるB税理士法人にAの顧客先を引き継ぐ契約を締結し対価を受け取った。Aが受領した対価に対してどのような所得税課税が行われるか。
その対価が低額であった場合や無償であった場合、みなし譲渡課税は適用されるのか。
結論
譲渡所得の基因となる「資産の譲渡」には該当せず、受領した対価による所得は雑所得とする取扱いがほぼ定着している。裁判例もこれを支持しているものと考えられる。
福岡高裁平成24年3月9日判決
(概要)
税理士業を行う原告が、その事業を他の税理士に承継するのに伴い受領した金銭を当初雑所得として確定申告を行い、その後譲渡所得であったとして更正の請求を行い、更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けた事件の裁判
(原告の主張)
税理士業においては、税理士、従業員税理士、従業員及び顧問と税理士事務所の事務所独自のノウハウ等が一体となって税理士事務所の運営がなされている場合には、有機的一体の事業と評価され、その経済的価値に着目して事業の譲渡がされている・・・本件事業承継は営業の譲渡に該当し、・・・営業権類似の無体財産権の譲渡を含むものである。
(裁判所の判断)
税理士と顧問先との強い信頼関係を基礎とする委任契約に基づいて行われる税理士業務について、個人的信頼関係を無視してこれを他に移転することはできず、譲渡の対象となり得ないから、所得税法33条1項の「資産」には該当しない。
みなし譲渡課税の可否
低額や無償で引き継いだ場合でも、資産の譲渡でない以上、所得税法第59条第1項に規定されるみなし譲渡課税はない。
感想
私は、このような事例について、営業権の譲渡に該当するものと思い込んでいたので、雑所得になるという結論に意外性を感じた次第です。
言われてみれば「なるほど」と思うのですが。
具体例ではないのですが、ある知人が無償で税理士事務所を引き継いだ際、その話を聞いて「みなし譲渡課税大丈夫なのか?」と思ったことがありました。それも杞憂だった訳です。
引き継ぐ場合の対価交渉でも、この点を知っているのと知らないのでは、いくらか差が出そうな気もします。
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