使用人不正と重加算税(その2)~「会計・監査ジャーナル」2024年11月号~
- 佐藤篤
- 2024年12月6日
- 読了時間: 2分
以前、弊ブログで使用人不正と重加算税について取り上げたことがありましたが、それに関連して、「会計・監査ジャーナル」2024年11月号の連載「租税相談Q&A」の「法人の従業員が横領した場合における法人税に係る重加算税」(本田光宏)を読んでみました。
論点
税務調査において、法人の従業員の横領等の事実が発覚した場合、法人の課税所得が過少となっていた部分について、追加納付となる法人税額が重加算税の対象となるのはどのような場合であるか。
原則
法人は従業員の横領等により損害を被った場合には、その損害については、損害が生じた事業年度における損金を構成するとともに、法人が被った損害に相当する金額の損害賠償請求権を同じ事業年度における益金に算入する同時両建てが原則的な考え方とされている(最高裁昭和43年10月17日判決訴月14巻12号1437頁)
重加算税を規定する国税通即法では、本来的には納税者自身による隠蔽仮装行為が行われた場合を対象としている。
納税者以外の者の隠蔽仮装行為で重加算税を賦課することができる場合
最高裁平成18年4月20日判決民集60巻4号1611頁(以下「最高裁平成18年判決」)では、納税者以外の者の隠蔽仮装行為が納税者本人の行為と同視することができる場合には、重加算税を賦課することができるとしている。
第三者の隠蔽仮装行為を納税者本人の行為と同視できる場合
最高裁平成18年判決で示された判断枠組みを分かりやすく示すと、次の4つの要件に分けることができる。
納税者において税理士(注;最高裁平成18年判決における「納税者以外の者」が税理士だった)が隠蔽仮装行為を行うこと若しくは行ったことを認識し、又は容易に認識することができ(隠蔽仮装行為の認識又は容易に認識可能)、
法定申告期限までに隠蔽仮装行為の是正や過少申告防止の措置を講ずることができたにもかかわらず(是正・防止措置可能性)、
納税者においてこれを防止せずに隠蔽仮装行為が行われ(納税者の不作為)、
それに基づいて過少申告がされた時(因果関係)
感想
以前弊ブログで同じ論点を取り上げた時は、このような判例があることを知らず、法人側に酷だなあという印象を持ちましたが、上述の最高裁平成18年判決の枠組みを読むと、法人側にも少なくとも争う余地はあり、私の印象は間違っていたようです。
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