気候変動とESGに係る研修を受講してみました
- 佐藤篤
- 2021年8月10日
- 読了時間: 3分
更新日:2022年5月26日
前回のエントリーで気候変動に関連した財務情報とそれに係る監査・保証のネタを取り上げましたが、タイミング良く「気候変動及びESGが企業経営に与えるインパクト」と題されたJICPAの研修がWebでリリースされておりましたので、早速受講してみました。
1.研修の全体的な感想
そもそもの話として気候変動関連の情報はニュースや雑誌新聞等で断片的に情報が入ってくるのみで、体系的な形で理解していないという自覚がありました。
その辺りに関して、1990年に公表されたIPOC報告書から2015年12月のパリ協定までの国際的な取組みとそれに対する各国のスタンスという形でわかりやすくまとまっていました。
そしてそういった流れの中で最近よく耳にするESG投資やSDGsといった考え方が登場した経緯にも触れられていました。
一方で気候変動関連の情報開示やそれが財務情報へ及ぼす影響の今後の方向性については特に触れられておらず、個人的には残念でしたが、講師の花崎先生の専門外な分野であり、この点はやむを得ないと理解しています。
2.面白かった点~温室効果ガス排出規模と企業パフォーマンス
講師の花崎先生ご自身がなされた学術的な実証分析についても解説がありました。
(以下、研修レジュメより引用)
輸送用機械、化学、電気、一般機械の4産業の企業を対象に温室効果ガス排出規模の3年間の増減がその翌年の各企業の財務パフォーマンス指標(ROA,ROE,ROS,トービンのq)と連関性があるか否かについて回帰分析を実施。
輸送用機械と一般機械では中期的な温室効果ガス排出規模の削減が大きい企業ほどパフォーマンス指標が優れているとの結果。化学と電気では温室効果ガスの削減と企業パフォーマンスには有意な関係は存在しないとの結果(引用終わり)。
直感的にはESG投資に積極的な企業ほどパフォーマンスは低下しそうな気がしますが、成長率の高い企業がESG投資を積極的に行っている傾向にあるのがその要因とのことで、納得できました。
言い過ぎかも知れませんが、輸送用機械の高パフォーマンスはテスラ社1社だけで説明ついてしまうような気もします。
3.面白かった点~世代による気候変動への関心の差
10代から30代の若い世代ほど気候変動に関心が薄く、中高年世代ほど関心が高くなる傾向があるという内閣府による調査結果の説明もありました。
この点、オンタイムでの受講者さんのお一人が、高齢世代は海岸線の浸食や降雪量の減少等で温暖化を実感出来ているのに対し、若い世代はそういった実感を持ちにくいのではないかとの分析をされていたのですが、確かに私も冬に帰省した際の雪の少なさで温暖化を実感しており、説得力ある分析だなと思いました。
4.まとめ
講師の花崎先生の解説は分かり易く、またオンライン受講されていた方々の質問も私が抱いていた疑問点とほぼ一致しており、視聴してよかったと思えた研修でした。
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