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業種特性および地域特性が会計不正へ及ぼす影響~「企業会計」2025年12月号~

  • 佐藤篤
  • 2025年12月23日
  • 読了時間: 3分

「企業会計」2025年12月号の特集「悪の会計を科学する」の中の「会計不正の震源地」(浅野信博)が興味深い内容でした。

 

当該論考の目的は以下のように記されています

本稿の目的は、(中略)、主要な実証研究をレビューし、業種特性および地域特性が会計不正の発生に対してどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることである

 

会計不正を業種別・地域別に切り取る視点はこれまであまりみたことがなく、期待を持って読みました。

 

 

1.業種別に見る会計不正

 

ACFE(Association of Certified Fraud Examiners)(2020)のレポート

  • 業種地域ごとに不正の発生率に差異があることを指摘し、とりわけ製造業で不正が多発している実態を強調している

 

Du Pon et al.(2024)

  • 1993年から2017年までのSEC会計・監査執行通牒(AAERs)を用いて、製造業と非製造業のいずれが会計不正を誘発しやすいかについて明らかにした研究で、以下の結果が示された

    • 製造業が非製造業に比べて不正の発生率が2倍以上であること

    • 製造業における不正は経営者の機会主義的動機によるものではなく、価格競争の激化という業界の構造的要因に強く規定されていること

    • 価格競争の影響は経営者報酬の影響と同等あるいはそれ以上であること

 

Wang and Winton(2021)

  • 米国企業を対象に、産業内の情報環境と会計不正の関係を分析した研究で、産業特性が企業の不正行為に重要な影響を与えることを示した。具体的には、以下の結果が示された。

    • 製品市場感応度(業績が市場競争圧力にどれほど敏感に反応するかを示す概念)が低い産業においては会計不正の発生率が高まること

    • 経営者の評価に相対的業績評価(RPE)が強く用いられる産業で不正発生率が約12%上昇すること

    • 分散型産業、すなわち企業数が多く情報収集が困難な産業では、不正発生率が高まるのみならず、不正発覚率が低下すること

    • 不正発生率は景気拡大期において増幅し、その後の景気後退期に不正発覚率が上昇する傾向があること

 

 

2.地域別に見る会計不正

 

法起源~英米法と大陸法

  • 英米法は市場重視の伝統を基盤とし、少数株主保護や情報開示義務、訴訟制度の整備を通じて投資家保護を強化してきた

  • 大陸法は国家規制や債権者保護を重視する傾向が強く、外部投資家保護や開示制度は相対的に脆弱

  • 法起源の相違は、経営者や監査人に対する訴訟エクスポージャーに相違をもたらし、英米法諸国では訴訟エクスポージャーが大きいのに対し、大陸法諸国ではその程度が相対的に小さい

 

Ball et al.(2000)

  • 会計利益の保守主義に着目し、英米法諸国と大陸法諸国の差異を検証した研究

  • 英米法諸国では損失を早期に認識する傾向が強いのに対し、大陸法諸国では利益が労働者や政府への配分と結びつくため政治的影響が大きく、損失認識が遅れることが示された

 

Leuz et al.(2003)

  • 31カ国を対象として国際比較を行い、各国における利益マネジメントの程度を分析した研究

  • 強い法執行と株主権保護を備える国(米国、英国など)では利益マネジメントが小さく、逆に法執行の弱い国(イタリア、インドなど)ではその程度が大きいことが確認された

 

Burgstahler et al.(2006)

  • 欧州13カ国の企業を対象に、法制度の差異が利益マネジメントに与える影響を検討した研究

  • 投資家保護や訴訟制度が強固な英米法諸国では利益マネジメントが抑制される一方、大陸法諸国では投資家保護が相対的に弱く、債権者保護や国家規制が重視されるため、利益マネジメント余地が大きいことが示された

 

 

感想

業種別については、直感的には製品市場感応度が高いほど会計不正リスクは高そうに感じますが、結果は逆だったようで、興味深い内容でした。

地域別については、経営者や監査人への訴訟エクスポージャーの大きさが肝のように感じました。

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