望ましいセグメント利益とセグメント変更の妥当性~セグメント情報分析研修を受けて(その2)~
- 佐藤篤
- 2021年9月21日
- 読了時間: 3分
更新日:2022年5月26日
セグメント分析研修の感想の続きです。
この分析研修の資料では、投資関連事業に従事している金融機関等へアンケートを実施されています。
その回答結果で個人的に気になったものがありましたので、以下で触れてみたいと思います。
セグメント利益について、日本では営業利益がセグメント利益として開示されるケースが多いですが、セグメント利益として望ましいものは?という質問では、1位は営業利益でしたが、それ以下の順位として、経常利益や税金等調整前当期純利益よりも、営業キャッシュフローとEBITDAが回答上位に位置していたのが印象的でした。
EBITDAなら、セグメント利益が営業利益で且つ減価償却費をセグメント別に開示していれば凡そ近い数値は算出できますが、営業キャッシュフローとなると根本的な決算業務見直しが必要で、これに対応するとなるとかなり難儀しそうです。
その他のセグメント利益に関して、経常利益や税金等調整前当期純利益をセグメント利益とされると一過性の損益がセグメント利益に含まれることになるため期間比較がし辛いというコメントがありました。これはIFRS適用企業にも言えることで、営業利益ベースでの開示の優位性をサポートする回答だと思います。
また、上記のアンケートに加えて、アンケートへの回答でインタビュー可とされた2名の方へインタビューを実施し、その内容も併せて掲載されていました。
その中で気になったのはセグメント変更の継続性への配慮という点でした。具体的には、マネジメントアプローチ導入から10年以上が経過したが、その後セグメント変更が以前より頻繁に行われるようになり、分析しづらくなったというコメントがありました。
これは会計監査人としても実感していることで、マネジメントアプローチ導入以前は継続性が監査上の最大のポイントとされていて、監査法人内の審査でもセグメントの変更は簡単に認められるようなことはなかったのですが、マネジメントアプローチ導入後はセグメントの変更が比較的頻繁になされるようになりました。
更にインタビューには赤字事業隠すための変更もみられるとのコメントもあり、私も多少そういった意図が空けて見えるセグメント変更に遭遇した経験があります。
加えて、頻繁なセグメント変更の結果として期間比較の継続性が損なわれるという問題があり、インタビューにはセグメントを変更した場合は、可能なら5年程遡及的に変更開示してほしいというコメントもありました。
これもお気持ちは分かりますが、開示する会社担当者の負担を考えると何とも言えない気分になってしまいます(笑)
以上、セグメント分析研修のまとめでした。
私が感じていたことを裏付ける内容があり、一方で新たな視点を提供してくれる内容もありで、個人的には有意義な研修でありました。
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