書評「英語独習法」(今井むつみ著)
- 佐藤篤
- 2021年4月27日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年7月9日
公認会計士事務所のブログなのに英語学習ネタが続きます。
ここ最近、本屋さんの新書コーナーを覗くと英語学習関連本が多いなあ、と感じていました。その中でも信頼の岩波新書且つベストセラーということで「英語独習法」(今井むつみ著)を読んでみました。2020年12月18日に第1刷、私が購入したのは2021年2月25日の第5刷ですので、人気の程が窺い知れます。
著者の今井さんは英語の先生ではなく認知科学の専門家ということで、英語の専門家が書いた、日本人が間違いやすい英語表現の解説本の類とは趣が異なっています。
そのキーとなるのはスキーマという概念なのですが、それを分かり易く表現するのは私の能力の及ばない所ですので、本から引用します。
言葉についてのスキーマは、氷山の水面下にある、非常に複雑で豊かな知識のシステムである。スキーマはほとんど言語化できず無意識にアクセスされる(引用終わり)。
このスキーマなるものが日本語と英語で大いに異なるため、多くの日本人にとって英語を習得するのが難しくなっているというのが著者の今井さんの主張です。もちろんそれだけでこの本が終わったらベストセラーになる訳はないので、それを踏まえてどう学習していくべきかが述べられます。それをこのブログに全て書き記すことはしません(できません)が、いくつかなるほどと思ったポイントに触れたいと思います。
まず一般的なリスニング教材はリスニング力を伸ばすのには不向きだと指摘されています。何故なら実際のリスニング場面では音声情報だけではなく、相手の表情だったり、お互いが置かれた状況だったり、場合によっては気温や天候だったり、自らの五感を駆使して相手の発する情報を解釈しているからです。これをマルチモーダルな状況と表現しています。
そしてマルチモーダルな状況に近いのが映画ということで、お気に入りの映画をリスニング教材として利用することを著者はお勧めしています。
それなら早速やってみようと思ったのですが、自宅にある洋画DVDが「羊たちの沈黙」と「ゴッドファーザー」ボックスセット位しかなく、教材としては不向きな気がして、まだ実践できておりません。
次に著者は英文の多読より熟読を勧めています。
多読も目的次第では充分な有効性があるものの、熟読でスキーマを構築していくことが結果的に悪くないレベルの英語を身に着けることに繋がるとのことです。
これは比較的実践しやすいのでNHKラジオのテキストを使って熟読してみました。
今までは意味を捉えられればそれで良しとする読み方をしていたのですが、熟読してみると、単数形複数形、冠詞や前置詞のチョイスといった点が一々気になってきます。
これは和文英訳をする際に悩むポイントと一致していて、なるほど熟読は英文作成にも効果的な方法なのだなと実感させられました。
上記の他にもいろいろな気付きを与えてくれる本ですので、英語学習者であれば一読されることをおすすめします。
Comments