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新公益法人会計基準の主な変更内容(その1)~貸借対照表、活動計算書、負担軽減規定~「会計・監査ジャーナル」2025年10月号~

  • 佐藤篤
  • 10月14日
  • 読了時間: 5分

更新日:10月21日

弊ブログでは、過去に2度程、新公益法人制度に係るエントリーをアップしたことがあります(リンク1)(リンク2)。

いずれも思った以上に読まれておりまして、ニーズの高さを感じました。

 

その公益法人に関連して、「会計・監査ジャーナル」2025年10月号に掲載されていた「新しい公益法人会計基準について」(松前江里子)から、会計上の具体的な変更内容と小規模法人向け負担軽減措置を取り上げたいと思います。

 


主な変更内容~貸借対照表関連


  • 貸借対照表における基本財産、特定資産等の表示

(従来)固定資産の部は基本財産や特定資産等の目的による表示がなされていた

(改正後)資産の形態に基づく流動固定区分による表示になった。従来からある基本財産、特定資産については、注記により表示する。


  • その他有価証券の時価評価差額

(従来)フローの計算書類である正味財産増減計算書の評価損益等の区分で計上されていた

(改正後)貸借対照表の純資産の部において「その他有価証券評価差額金」として、純資産直入法により計上する。なお、保有区分が売買目的有価証券のものについては、売却損益及び評価損益は、活動計算書に計上する。


  • 固定資産の減損会計

(従来)固定資産の時価が著しく下落した場合の強制評価減が採用されていた

(改正後)固定資産を資金生成資産と非資金生成資産に分類して、それぞれの資産に減損の判定フローを当てはめて適用する、いわゆる減損会計が適用される。なお、公益目的事業財産は非資金生成資産に該当するということが運用指針において示されている。

(簡便な取扱)会計監査人設置法人以外の法人については、保有している固定資産について、現に使用されておらず、かつ、引き続き使用されることが見込まれない財産については市場価額が著しく下落した場合の強制評価減を採用することができる。

 


主な変更内容~活動計算書関連


  • 損益計算書の名称・記載内容の変更と振替処理の廃止

(従来1)正味財産増減計算書の名称で、一般正味財産増減の部と指定正味財産増減の部に区分して、一般正味財産増減の部は、経常増減と経常外増減に区分されていた

(従来2)寄付者等がその使い道を指定して寄付をする場合には、受け入れる寄付金収入は指定正味財産増減の部において計上し、使途の目的に使用されて費用が計上される場合に指定が解除されて、対応する収益を一般正味財産増減の部へ振替処理を行うこととなっていた

(改正後)上記の処理は廃止され、同様の情報を注記として開示する


  • 費用科目の表示方法

(従来)形態別区分表示が原則

(改正後)活動別分類表示へ変更。従来の形態別分類による情報や財源別、事業区分別の情報については、注記により開示する。


  • 貸借対照表と活動計算書間の整合性

(従来)貸借対照表の純資産の合計額は、正味財産増減計算書の合計額と一致するように作られていた

(改正後)有価証券評価差額が活動計算書を経由せず、直接、貸借対照表純資産の部に区分計上されるようになるため、財源別注記情報を介さないと、活動計算書と貸借対照表は一致しなくなる


  • 配当金・利息の会計処理

(従来)寄付者等から配当金の使途に制約が課されている場合等において指定正味財産として会計処理することがあった

(改正後)指定純資産を原資とする資産から生じたものであっても、一般正味財産区分の収益として会計処理する。また、指定資産を原資とする資産に係る売却損益や評価損益、減損損失については、指定純資産区分の収益又は費用として処理する


  • 交換取引の収益認識

(従来)特に明示されていなかった

(改正後)企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準委員会)が採用される。但し、公益法人向けに、5ステップが3ステップにまとめられている他、消費税の会計処理は税抜き処理又は税込処理のいずれかを選択可能。なお、会計監査人設置法人以外の法人は、簡便的な方法として、伝統的な実現主義による収益計上が可能。


  • 非交換取引の収益認識

(従来)寄付金や補助金等の非交換取引について、指定正味財産の会計処理が定められていた

(改正後1)より詳細に収益認識の時点が明示された

(改正後2)新たに未収寄付金及び未収補助金に関する取扱いが明示された

(改正後3)現物寄付に係る会計処理についても、具体的な取扱いが規定された

 


小規模法人の負担軽減


  • 会計監査人設置法人(定款で会計監査人を設置した法人)以外の法人が対象で、以下の項目について、適用又は作成しないことができる

    • 資産除去債務に係る会計処理

    • 税効果会計の適用

    • キャッシュ・フロー計算書の作成

但し、会計監査人設置法人の中でも認定法第5条第13号及び認定令第6条により会計監査人を設置する義務のある公益法人以外の法人は作成しないことができるとされている

  • 資産及び負債の状況の注記(財産目録を作成している場合に限る。)

  • 財産目録相当の内容の注記であり、財産目録を作成するか当該注記により開示するかの選択ができることとなっている

  • 賃貸不動産の時価等に関する注記

  • 財務規律適合性に関する明細

但し、作成しない場合は、従来通り、事業報告等の定期提出書類にて作成し、行政庁へ提出することとなる点に留意が必要


  • 以下の項目について、簡便な方法が認められている

    • 固定資産の減損会計

    • 退職給付会計

    • 収益の認識基準

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