公益法人会計基準の主な改正内容~「会計・監査ジャーナル」2025年6月号~
- 佐藤篤
- 7月1日
- 読了時間: 3分
先週のエントリーで、雑誌「企業会計」の公益法人制度改革と公益法人会計基準の改正に係る解説記事を取り上げましたが、公益法人会計基準に係る記述が少なかったので、今回は
「会計・監査ジャーナル」2025年6月号のアカデミック・フォーサイト「2024(令和6)年の公益法人制度改革と公益法人会計基準改正」(尾上選哉)から、会計基準に係る部分を取り上げます。
公益法人会計基準の歴史
公益法人会計基準は、1977(昭和52)年3月に設定された
2004(平成16)年10月に従来の会計基準を大きく変更する抜本的な改正がなされた(以下「平成16年会計基準」)
2006(平成18)年6月に旧公益法人制度を改正するための公益法人制度改革関連三法が成立し、2008(平成20)年12月に施行されたことにより、新しい公益法人制度がスタート(以下「2006年制度改革」)
2006年制度改革に対応する形で、公益法人会計基準も2008(平成20)年4月に改正(2009(平成21)年10月、2020(令和2)年5月に一部改正)された(以下「平成20年会計基準」)
今般の公益法人制度改革(以下「2024年制度改革」)を受けて、2024(令和6)年12月に公益法人会計基準にも大きな改正が加えられ、2025(令和7)年4月1日以降に開始する事業年度から運用開始となっている(以下「令和6年会計基準」)。ただし、2028(令和10)年3月31日までに開始する事業年度までは、平成20年会計基準の適用も可能とする経過措置が講じられている。
2024年制度改革のうち、開示とガバナンスに関する内容
行政庁による財産目録等の定期提出書類の原則公開化(定期提出書類の切り替わり)
定期提出書類の開示情報の拡充(役員報酬等の総額2000万円を超える役員についてその額・理由,特別の利益を与えてはならない法人関係者,海外送金の有無、テロ資金供与等のリスク低減対策の実施の有無など)
区分経理の原則義務化(別表Hの廃止)
外部理事・外部監事の導入
理事・監事間における特別利害関係の排除
会計監査人必置範囲の拡大
立入検査の頻度・内容のメリハリ付け
実効性の高い監督を実現するための運用の見直しなど
令和6年会計基準
2024年制度改革に伴う公益法人制度に整合的なものとする見直しに加え、有識者会議が指摘した「わかりやすい財務情報の開示」の実現に向けた具体的な見直しが行われた
「わかりやすい財務情報の開示」実現のため、「本編は簡素で分かりやすく、詳細情報は注記等で」との基本的考え方に立って改正されている
主要な改正点
財務報告の目的として、資源提供者の意思決定に有用な情報および資源の受託者としての説明責任を果たすための情報の提供が明示された
(貸借対照表)
従来の固定資産の区分(基本財産、特定財産、その他固定資産)を「有形固定資産、無形固定資産、その他固定資産」に変更
正味財産の部を「純資産の部」に変更
(活動計算書)
フローの計算書の名称を正味財産増減計算書から活動計算書に変更し、一般正味財産増減の部および指定正味財産増減の部を廃止し、純資産全体の増減を「経常活動区分」と「その他活動区分」に区分して記載する様式に変更
活動計算書の末尾を「当期収益費用差額」に変更
費用科目は活動別分類による表示に変更
(注記・附属明細書)
従来作成されていた会計区分別の貸借対照表内訳表および正味財産増減計算書内訳表は注記事項に変更
財源区分別(一般純資産と指定純資産)の活動計算書の注記(振替処理は行わない。)、事業費・管理費の形態別区分を新設
(財産目録)
貸借対照表の注記として「資産及び負債の状況」を新設し、財産目録の内容をこの注記に記載している場合には、財産目録とみなされるよう変更
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冒頭で触れた先週の公益法人制度に係るエントリーが想定外に読まれていたので、近いタイミングではありますが、関連エントリーを補足的にアップした次第です。
私の想像以上に関心の高いテーマのようです。
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