公益法人制度の変更と会計基準の改正~「企業会計」2025年6月号~
- 佐藤篤
- 2025年6月24日
- 読了時間: 3分
「企業会計」2025年6月号に「新公益法人会計基準に伴う変更点と展望」(金子良太)が掲載されておりました。
個人的に公益法人には関与していないのですが、学校法人とともに大きめの制度改正ということで、何が起こっているのかを知るべく読んでみました。
改正の概要
令和6年12月20日、新たな「公益法人会計基準」と「公益法人会計基準の適用指針」が内閣府公益認定等委員会で決定された。およそ20年ぶりの大改正となる。
2025年4月1日より開始する事業年度より適用が開始されるが、2028年3月31日まで3年間の移行期間が設けられる。
改正の背景
平成18年の公益法人制度改革においても、公益法人数はあまり増えることがなかった
その要因として、公益法人格を維持するのに必要な要件が厳格であることが指摘されていた
例)税制上の優遇と引き換えに、毎年度収入と支出とが均衡する収支相償を満たすこと、事業に使用していない財産(遊休財産)を保有することを規制する等
要件を満たせない場合には公益法人としての法人格を取り消され、一定の財産を公益目的のために支出する必要があり、その支出必要額等の計算も極めて煩雑だった
単年度の収支が均衡しないことに対しては、(将来の特定の費用に充てるための特定費用準備資金など)一定の措置はなされていたが、法人の立場からすれば使い勝手が良くなかった
収支の均衡が強く求められる結果として、必要性の高くない事業等に、支出を行わざるを得ない状況が見受けられた
遊休財産の保有規制により、いざという時のために備える財産を保有することができず、法人や事業の継続可能性に問題が生じるケースがコロナ禍等に見受けられた
新制度上の対応
新制度では収支均衡を、単年度ではなく、より長期にわたってみることとなった。過去4年間で赤字が出た場合通算を可能にし、加えて黒字が出た場合今後5年間での解消が行われれば良いものとされた(中期的収支均衡)。
収支は公益目的事業単位ごとで判定されていたのが、公益目的事業全体で中期的収支均衡を判定することとされた
不確実な運営を担保するための一定程度資産の保有制限は従来よりも柔軟化され、「遊休財産」の名称は「使徒不特定財産」に変更された
「公益目的事業継続予備財産」(災害等の予見しがたい事由に対応し、公益目的事業を継続するために必要となる公益目的事業財産)をその保有制限の算定対象から除外するとともに、当財産の保有について理由の公表を義務付けた
新会計基準の特徴
財務諸表本表はシンプルになる一方で、詳細な情報が注記や附属明細書等で開示されるようになる
減損会計・収益認識会計が導入される一方、使用権モデルに基づく新リース会計基準や、「時価の算定に関する会計基準」に基づく時価の定義の導入や時価の算定方法の開示は見送られている
貸借対照表の資産区分が企業会計と同様の流動・固定分類となる
純資産は「指定正味財産」「一般正味財産」から、「指定純資産」「一般純資産」に名称が変更されたが、寄付者の使途の指定に基づく純資産区分は堅持された
収益と費用、その差額を示すフローの計算書については、「正味財産増減計算書」が「活動計算書」に変更となった
従来、一般正味財産増減の部、指定正味財産増減の部とに区分して表示されていたが、新基準では区分されず一括して示され、一般純資産・指定純資産別の増減内訳は注記で示されることとなった
感想
改正の背景を読むと確かに利用しづらい制度だったのだろうなと思う一方、緩和すると悪用する法人が出てくるのも想像に難くなく、この手の話では毎度のことながら、制度設計の難しさを感じさせられます。
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