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改正公益通報者保護法の実務への影響~「会計・監査ジャーナル」2025年8月号~

  • 佐藤篤
  • 8月22日
  • 読了時間: 2分

前回のエントリーで、「会計・監査ジャーナル」2025年8月号「改正公益通報者保護法の概要と実務への影響」(金山貴昭)を取り上げましたが、その際に省略した「実務への影響」部分に今回は触れたいと思います。

 

通報後1年以内の解雇又は懲戒は公益通報を理由としてされたものと推定する規定(改正法3条3項)について

  • 解雇の場合には、現行法においても事業者側が解雇の合理性・相当性ついて立証しなければならないことから、すでに慎重に対応をしていると考えられ、解雇が公益通報を理由としないことを立証するための準備は一定程度対応できているものと考えられる。

  • 一方、今回の改正では懲戒処分も立証責任の転換を定めているため、解雇の場合と同様の記録化の充実を検討する必要がある。

  • 例えば、ある従業員がコンプライアンス違反行為を行っていたところ、自己のコンプライアンス違反以外の事実について公益通報を行った場合、事業者は、この従業員に対してコンプライアンス違反を理由に解雇や懲戒処分などの然るべき措置を講じる必要があるものの、これらが公益通報を理由とした解雇等であると主張されることを懸念し、処分を躊躇してしまう可能性がある。

  • 現行法でも同様の問題は生じ得るが、今回刑事罰が導入されたことで、事業者にとってはより深刻な懸念となる。

 

正当な理由がなく、公益通報をしない旨の合意をすることを求めること等によって公益通報を妨げる行為をすることの禁止と、これに違反してされた合意等の法律行為を無効とする規定の新設(改正法11条の2)について

  • 従業員が会社との関係で負う守秘義務の関係で問題となり得る。つまり、労働契約(就業規則)上の守秘義務や、事業者が労働者との間の紛争について和解合意した場合の守秘義務について、「公益通報しない旨の合意」や「正当な理由」に該当するかが問題となりうる。

 

正当な理由がなく、公益通報者を特定することを目的とする行為をすることを禁止する規定の新設(改正法11条の3)について

  • 例えば、匿名で真実相当性のない情報を社外の取引先等に伝えた従業員がいた場合、事業者は懲戒処分等を行うためにこのような情報提供を行ったものを特定する必要が生じるが、「公益通報者を特定することを目的とする行為」や「正当な理由」の適用範囲や解釈が不明確なままだと、事業者への萎縮効果が生じうる。

 

感想

このような法律の悪用の仕方もあるのだな、と勉強になりました。

いつものことながら、制度を構築することの難しさを感じます。

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