改正「時価の算定に関する会計基準の適用指針」で気になった点
- 佐藤篤
- 2021年9月28日
- 読了時間: 3分
2021年6月17日に改正企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(以下「改正適用指針#31」)が公表されました。
改正前の企業会計基準適用指針第31号は2019年7月4日に公表されていたのですが、投資信託の時価の算定に関して関係者との協議等に一定の期間が必要と考えられたため、概ね1年の検討期間が設けられていました。その検討が終了し、今回改正された訳です。
改正の内容は大手監査法人のHP等で解説されていますのでここでは触れず、個人的に気になった点に触れたいと思います。
全体として
全体的にはASBJが関係者(銀行、投資信託の運用を行っている会社、証券会社等)や決算実務へ配慮したような印象です。
例えば、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約または買戻請求(以下「解約等」)に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合は基準価格を時価とすることが認められましたが(改正適用指針#31第24-2項)、基準価額は投資信託委託会社等が公表するものであり、第三者から入手した相場価格として時価算定会計基準に従って算定されたものであることを利用者側が判断する必要が本来はあるはずですが、そのような取扱とはされませんでした。
これは否定的なニュアンスで捉えている訳ではなく、実務サイドとして寧ろ歓迎しています。特に金融機関の決算担当者や会計監査人はホッとしているのではないかと想像します。
「解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限」の有無の判断
最初に当該改正の概要だけを読んだ時に具体的にイメージができなかった部分でした。
これについては「重要な制限」に該当しない例が3つ程提示されています(改正適用指針#31第24-4項)。
条件が満たされる蓋然性が低い条件付きの解約制限(金融商品取引所の取引停止などやむを得ない事情がある場合にのみ、一部解約等を制限する場合など)
解約に応じる投資信託委託会社の事務手続きの便宜のための最低解約額の設定
解約可能日が定期的に指定されており、その間隔が短い(例えば一か月程度)もの
これを参考に最終的には各自が判断することになります。
市場価格のない投資信託財産が不動産である投資信託の会計処理
特段の定めがないことに起因して、実務上は時価をもって貸借対照表評価額としているケースと時価を把握することは極めて困難として取得原価をもって貸借対照表評価額としているケースが混在していましたが、今回の改正において時価をもって貸借対照表評価額とすることが明確化されました(改正適用指針#31第49-10項)。
従来取得原価をもって貸借対照表評価額としていた場合は今後同様の処理が認められなくなりましたので注意が必要です。
以上、簡単ではありますが、今回の企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」改正に関する個人的所見でした。
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