改めて、税効果会計の怖さを認識する~「企業会計」2024年10月号~
- 佐藤篤
- 2024年10月29日
- 読了時間: 3分
「企業会計」2024年10月号の特集「決算・財務報告プロセスに係る内部統制の不備と対策」に「税効果会計」(福山憲児)が掲載されていました。
その一部のメモ書きとちょっと長めの感想です。
税効果会計の主要特徴
1.税制への依存性
税制の変更が会計処理に直接的に影響を与えるため、税法の知識を十分に持ち、税制の変更に迅速に対応する必要がある。
2.他の処理結果との連動性
税効果会計の処理は、他の税務・会計処理の結果を反映することが求められるため、通常、企業の決算スケジュールの中で最も後ろの工程として予定される。
3.検討の困難性
会計処理基準自体が比較的複雑である。
将来の税金等調整前利益が確実に発生するかどうかに依存する繰延税金資産の回収可能性や、将来の税金負担を見込んだ繰延税金負債の適切性について、高度な判断が求められる。
内部統制の不備事例
1.不正などの事象により、すでに公表された財務報告における資産や利益に修正が必要となった結果、税金額や繰延税金資産・負債の金額も修正が必要となったケース
過去長期間にわたり経費の水増し請求が行われ、関与者へキックバックが行われていたという従業員不正が発覚した。その結果、経費性が否認され長期未収入金への振替、および当該未収入金に対する貸倒引当金の処理などが必要となった。税務上の一時差異には影響が生じなかったが、税金等調整前利益に修正が入ったことで、税負担率差異内訳の注記を修正する必要が生じた。
2.税務申告における判断ミスやその他会計方針に関する誤り等、決算・財務プロセスに不備があったと推測されるケース
定額での減価償却を行っていた一部の資産について、一括での費用処理を行うことが適切と判断された結果、一時差異としての減価償却費限度超過額が増加し、繰延税金資産額が増額された。
顧問税理士と会計処理について相談する過程で、グループ会社に対する債権放棄に係る過去の税務処理の誤りが発覚し、損益計算書における当期の税金額、および当期純利益などが修正された。これに伴い法人税等負担率の内訳注記の修正が必要となった。
感想
税効果会計の怖さはまさに上述の他の処理結果との連動性にあって、他の会計処理を変更すると、ほぼ漏れなく税金見積額と税効果にも影響するのが厄介な点です。
税金見積額と税効果に影響しなかったとしても、負担率注記の修正は避けられないことが多く、厄介さを増しています。
また、税効果の考え方のシンプルさと相反して、会計基準が複雑(特に連結税効果)なのも間違えやすいポイントで、決算業務や会計監査に携わったことがある人なら一度位「やらかした」経験があるのではないかと想像します(私もやらかし経験あります)。
さらに繰延税金資産は分配可能額の算定上、のれんや繰延資産のような制限がないため、過年度の決算を修正した結果、過去の配当が蛸配当になってしまう可能性もあります。
本当に気の抜けない決算・監査項目だな、と改めて実感した次第です。
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