スカイマーク㈱のKAMとPER
- 佐藤篤
- 2022年12月20日
- 読了時間: 2分
先日、2022年のIPO振り返りに関するエントリーをあげましたが、その冒頭でスカイマーク株式会社(以下「スカイマーク社」)の上場に触れました。
折角の機会なので。スカイマーク社の有価証券届出書を見てみました。
最初から余談ですが、こういう時KAMがあると会計上のリスクポイントがすぐに把握できて便利だなあ、と今更ながら思いました。
以前は業種の特徴や財務諸表から推察するしかありませんでしたから。
で、そのKAMに記載されていたのは
事業計画の合理性(繰延税金資産の回収可能性及び継続企業の前提に関する評価の基礎の検討)
定期整備引当金の見積方法の合理性及び算定過程におけるデータ集計の適切性
の2つでした。
繰延税金資産
スカイマーク社は2022年3月31日時点で繰延税金資産残高(167億円)が純資産合計残高(92億円)を上回っています。
繰延税金資産の回収可能性判断によっては債務超過だったことになり、これは確かにKAMになる訳です。
その影響で、事業等のリスクには継続企業の前提に係る記載がなされています。
会計監査人の内部審査でも、相当議論があったのではないかと想像します。
定期整備引当金
これは所謂大規模修繕引当金の類と理解しました。
発生主義に従い、整備費の見積額を期間に応じて計上していく訳ですが、見積次第で過少計上になるリスクがあります。
一方で現状のスカイマーク社では起こりえないと思いますが、わざと見積額を多めにすることで利益留保としても利用できてしまう性質を有しています。
情報処理過程の複雑さも相俟って、会計上のリスクが高いと判断したのだと思います。
株価収益率
有価証券届出書から離れて、株価収益率(PER)についてです。
スカイマーク社の株価は公開価格が1,170円、初値が1,272円、12月19日終値が1,500円と順調な滑り出しですが、PERは12月19日終値ベースで10.04倍です。
これはANAホールディングス㈱の33.90倍、日本航空㈱の26.34倍と比べて明らかに低く、「随分控え目だなあ」と思ったのですが、そのカラクリがYahooの掲示板に記載されていました。
スカイマーク社のPERは2023年3月期の当期純利益予想90億円に基づいて算出されているのですが、スカイマーク社は2023年3月期に繰延税金資産を57億円積み増す計画で、法人税等調整額が利益サイドに同額計上されています。
それを除くと当期純利益は32億円程度になり、結果的にPERは23倍程度に落ち着く、ということのようです。
スカイマーク社のHPにアップされている2023年3月期のガイダンスを見てみたのですが、確かにその通りでした。
表面的な数値だけみて飛びつくのは危険だなあ、と改めて実感させられた次第です。
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