会計学研究におけるエビデンスと機械学習~「企業会計」2025年7月号~
- 佐藤篤
- 7月22日
- 読了時間: 2分
最近は何らかの主張をする場合に「エビデンス」の有無が重視されている気がします。
私もその一人で、例えば健康関連の情報の場合、個人の感想なのか何らかのエビデンスがあるのかで、信憑性を判断しています。
ただ、本来はそのエビデンス自体の信頼性も問題とすべきなのに、その有無にばかり捉われてしまっているなあ、とも感じています。
そういった個人的な疑問に関連して、「企業会計」2025年7月号の連載「財務会計の機能‐実証研究の現在地と未来」の最終回「総括と未来への展望」(首藤昭信)で、エビデンス・レベル等に触れられていました。
以下、当該論考の一部メモ書きです。
会計学とエビデンス・レベル
因果関係の解明を意識した最も適切な分析方法はランダム化比較実験(RCT)であり、それらを統合したメタアナリシスが最もエビデンスのレベルが高い分析とされている
ランダム化比較実験が実行できない場合、実験のような状況を捉えた研究機会を識別することにより、実際に観察されたデータを用いて検証を行うのが自然実験・疑似実験である
これまでの会計学研究が多用してきた単純な回帰分析は、最もエビデンス・レベルが低い
メタ分析は非常に有意義であるが、会計学は分析デザインや注目する経済的帰結が各論文で異なることに加え、サンプルや年代も統一的ではないため、このような論文を対象にメタ分析を行っても、各論文の分析対象の特性の違い(異質性)の影響が大きく、得られた結果が何を意味するのか不明瞭となる
機械学習の活用
機械学習の会計学研究への応用は、当初の予想をはるかに超えて定着している
会計学が機械学習を利用する局面は、何らかの「予測」(例.倒産、不正会計、将来業績等)を行う際のアルゴリズムとして活用されることが多い
伝統的な会計学が利用していた従来の回帰モデルに替って機械学習を推計に利用することで、予測の精度が高まることが分かっている
記述情報に関する分析(テキスト分析)では、機械学習が会計学研究に完全に定着した
近年は、予測結果の根拠の説明を重視する、説明可能なAI(XAI)を活用した研究が主流となっている
感想
会計学の実証研究の限界が大まかに把握できた気がします。
当然、QRP(好ましくない研究行為)もゼロではないでしょうし、会計学に限らず、ある程度疑いの目を持って研究結果をみていく必要がありそうです。
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