リスクアプローチの改正と昔話
- 佐藤篤
- 2021年6月22日
- 読了時間: 3分
「会計監査ジャーナル」2021年7月号に「【特別座談会】改正監査基準を踏まえた監査基準委員会報告書改正の背景と主要論点について」という特集記事が組まれておりました。
リスクアプローチが改正されるということは知っていましたが、どこがどう変更されるのかまでは把握していませんでしたので早速読んでみました。
改正点はいろいろあるのですが、今まで固有リスクと統制リスクを結合して「重要な虚偽表示のリスク」を評価することも容認されていたのが、固有リスクと統制リスクを分けて評価することになった点が最も特徴的かなと個人的には思いました。
私が当時の会計士二次試験に合格して監査法人で働き始めた頃は、固有リスクと統制リスクを分けて評価していました。まだリスクアプローチの文書化がスタートし出した頃で、当時は何でもかんでも固有リスクを高にする実務が何故か定着していました。その事をピアレビュー(現在の品質管理レビュー)で指摘されたのが記憶に残っています。
それと、当時はアサーション別に固有リスクと統制リスクを評価していなかったと記憶しています。通常実在性と網羅性が両方リスク高になるケースは少ない訳で、何だかよく理解していないまませっせと調書作成しておりました。
今となっては良い思い出(?)です。
その3~4年後に監査基準が改正され、前出の固有リスクと統制リスクを結合して「重要な虚偽表示のリスク」を評価するようになった訳ですが、その時に併せて「特別な検討を必要とするリスク」(以下、特検リスク)概念が導入されました。
その時は固有リスク高と特検リスク有の違いがよくわかりませんでしたが、実務上は売上関連と不正リスク有を特検リスクに分類していました。
今回のリスクアプローチの改正ではその辺りの関係性も明確になるようです。
今回の改正で固有リスクは虚偽表示が生じる可能性と当該虚偽表示が生じた場合の影響(量的・質的含む)を組み合わせて評価しなければならない旨が追記され、特検リスクはその発生可能性と影響の両方高い場合に該当すると定義されることになりました。
15年越しでようやく頭がスッキリした気分です(笑)
この固有リスク評価改正の影響ですが、リスクアプローチに係る文書化が詳細化されるだけで、このことによって特検リスクが増減するといったような実証テストへの影響はないような気がします。寧ろ影響があるようなら、今までの監査計画がまずかったことになります。
ただ、その他のリスクアプローチに関する改正項目によって監査工数が増加する可能性は現時点では把握できておりませんので、その辺りで何か気が付いたらまた記事にまとめたいと思っております。
コメント