コモディティ価格の現状と見通し~最近の経済ニュース~
- 佐藤篤
- 2023年2月10日
- 読了時間: 3分
何もかも値上がりしている中で、大手企業の賃金アップのニュースも次々と報じられ、益々インフレが進んでいくことが見込まれる中、せめて原油含めたコモディティ価格は値下がりしてくれないものかと思っている今日この頃です。
テレ東の経済ニュースでは、コモディティに係る解説は新村直弘氏がほぼお一人で担っています。
その新村氏の最近の解説をまとめました。
原油
景気見通しが悪くなるとOPECは減産するが、通常の景気悪化局面ではほとんど効果がなく、原油価格は下がっていく。
ところがコロナ・パンデミックや脱炭素政策の影響で油田開発が抑制されており、OPECへの依存度が高くなっている結果、OPECの減産効果が従来以上に効果を発揮する状況となっている。
そのため、景気悪化に伴い原油価格は下がるものの、期待するほどは下がらない可能性がある。
工業金属(銅、アルミ等)
原油価格が落ち着いているのに対して、工業金属価格は上昇しているが、その要因は以下の通り。
中国の不動産テコ入れとリオープンによる需要回復(中国が世界最大の工業金属消費国)
米国の金融引き締め鈍化に伴うドル高修正
コロナパンデミック、ウクライナ戦争による取引所在庫の歴史的低水準
上記を背景とした投機筋の買い
中国は不動産バブルを発生させる意図はないはずで、中期的には世界的な景気悪化に伴って価格は下落していくだろう。
但し、脱炭素、脱ロシア、脱中国を実現させるためには、インフラ投資が必要となり、その影響で長期的には工業金属の価格上昇が見込まれる。
脱炭素のために再生可能エネルギーへの投資を大幅に増やす必要性があり、そのためには特に銅が必要になる。
脱ロシアのためには新たなLNG生産設備への投資が、脱中国のためには新たな工場建設のための投資がそれぞれ必要になる。
加えてインドにおける近代化設備投資も莫大になると見込まれる。
木材
今年に入って、木材価格が上昇している。
前回のいわゆるウッドショックの背景は、以下の通り。
米国の金融緩和による住宅建設ブーム
コロナによるサプライチェーンの崩壊
カナダの生産減少
2020年に発生した山火事被害
今回の木材価格の上昇は米国利上げ打ち止め観測に基づいたもの
米国の景気が悪化しない可能性、長期金利が下がらないまま景気が底入れする可能性、来年の大統領選に向けて景気刺激的な政策がとられる可能性のそれぞれが影響している。
日本は木材の国内自給率が4割程度で、残りは米国、カナダからの輸入に頼っているため、当然米国の木材市況の影響を受けるのに加え、年の後半辺りにでも米国の景気が回復すれば円安となり、輸入価格の更なる押し上げ要因となる。
感想
結局のところ、ある一つの資源への依存をやめるためには、別の資源に依存せざるを得なくなる、ということを新村氏が仰っていたのですが、本当にその通りだと思いました。
人口が増加する以上、長期的にはコモディティ価格は上昇が見込まれる訳で、短期中期的には波があるにせよ、基本的には下落しないものと思っておいた方がよさそうだな、との感想を持ちました。
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