インパクト投資の定義、要件、課題~「企業会計」2023年11月号~
- 佐藤篤
- 2023年12月8日
- 読了時間: 3分
以前、弊ブログでインパクト投資に触れたことがありますが、「企業会計」2023年11月号に特別寄稿「インパクト投資で期待される企業と市場との対話」(柳川範之)が掲載されておりましたので、読んでみました。
検討の経緯
2022年10月から金融庁において「インパクト投資等に関する検討会」が計8回にわたって開催された。
「インパクト投資等に関する検討会報告書―社会・環境課題の解決を通じた成長と持続性向上に向けて-」が2023年6月に公表された。
インパクト投資とは何か
社会・環境的効果と収益性の双方の実現を企図する投資と定義されている。
ここでの目線は投資家からのものであり、投資というのも、各企業による個別の実物投資というよりは、投資家による金融投資(株式、貸付)を指す。
投資を通じて収益実現を目指さない寄付は対象としない。
投資を通じて実現する社会・環境課題に対する効果が必ずしも明確でない投資も対象としない。
現実的な課題
社会・環境的効果は多様なものがあり、かなり定性的なものである。それを定量的なものに置き換えて評価するのは、現実的にはかなり困難な面がある。
実際に投資が行われる段階では、その効果はまだ予想や期待に過ぎず、実際の効果がどの程度生じると予想するのが合理的なのか、また生じたとしてもどう測定するのかという課題がどうしても付きまとう。
指針案で示された4要件
1.実現を意図する社会・環境的効果や収益性が明確であること
主語は投資家・金融機関であり、投資家・金融機関において事前に意図を明確にすることを要求する要件。
注意を要するのは、意図した社会・環境的効果とは別に、他の環境面への悪影響が生じるなど、副次的効果が生じる可能性があることである。この点については、重大な負の効果がある場合には、意図した社会・環境的効果と相殺せず、当該負の効果自体の緩和・防止に取り組む必要があるとされている。
2.投資の実施により、追加的な効果が見込まれること
投資先事業の市場展開がどうなっていくのかを、長期的な実現プロセスも含めて、わかりやすく、具体的に示していくことが求められる。
投資の前から実行後も含めて、事業性を改善するアドバイスや支援を必要に応じ提供することが求められている。
3.効果の特定・測定・管理を行うこと
投資家・金融機関はまず、投資の前に、期待する効果や収益性を特定し、これを測定するための定量的または定性的な指標を特定する必要がある。そして、投資・対話の実施後も継続してそれを確認することを要件としている。
4.市場や顧客に変化をもたらし又は加速し得る新規性等を支援すること
中長期的な視座から、投資先の事業がいかに効果を実現し、これをどう価値向上につなげるか、その戦略・因果関係を特定して、企業等の有する新規性・潜在性を引き出すことが投資家には求められる。
感想
社会的課題の解決と投資を結びつけて、よりよい社会を目指そうという発想自体は結構な事だと思うのですが、投資家・金融機関側がインパクト投資を実行するメリット(若しくは実行しないデメリット)ってあるのでしょうか。
何らかのインセンティブがないと、誰も投融資しようとしないのではないかと思うのですが。
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