2023年度の上場企業の監査実施状況分析~「会計・監査ジャーナル」2025年2月号~
- 佐藤篤
- 2月18日
- 読了時間: 3分
「会計・監査ジャーナル」2025年2月号に掲載されていた「上場企業の監査実施状況にかかる分析(2023年度)」(三原武俊)を読んでみました。
当該分析レポートの目的は以下のように記載されています。
日本公認会計士協会は、(中略)主要な法定監査を網羅した統計資料である「監査実施状況調査」を毎年公表している。
市場関係者や会計監査の関係者等を対象に、上場企業の監査業務に関して、さらに追加的な情報と分析を開示することで、会計監査の実態に対する社会の理解を促進することを目的としている。
以下、主要ポイントのメモ書きです。
分析調査対象
監査概要書に記載の監査報酬と監査時間を基に分析
2023年4月期決算から2024年3月期決算まで(以下「2023年度」)の監査業務のうち、12ヶ月決算の業務に限定するとともに、中期的なトレンドを把握するために、2019年度から2022年度までの過去4年度分の業務も対象とし、主に監査報酬と監査時間に着目した。
総監査報酬と総監査時間
直近4年で総監査報酬が約15%、総監査時間は約14%増加した。双方の増加率は概ね対応している。
直近4年で監査対象企業数は約5.5%増加した。
一業務当たりの平均監査時間は、2019年度と比較すると、約6.9%増加した。
4年間で総監査時間が増加した要因は、企業数の増加と、一業務当たり平均監査時間の増加の両方により起こったと言える。
2023年度の監査報酬は、前年度と比較して、比較可能な企業の58%が増額し、25%の企業が変わらず、17%の企業が減額した。
2022年度の分析と比較すると、増額企業の割合は3ポイント増加、同額企業は1ポイント減少、減額企業は2ポイント減少した。
事務所規模別の業務数の占有率
2019年度以降、大手監査事務所の占有率が低下し、その分、準大手と中小規模監査事務所の占有率が増加している。
時価総額規模の分析では、時価総額が大きいほど大手監査事務所の占有率が高い傾向にある。時価総額規模別に5分類した場合、最大の「1」では88%ある大手のシェアは、最小の「5」では29%まで低下する(2023年度)
準大手は「3」で18%、「4」で21%、「5」で21%を占めている。
「4」と「5」における大手のシェアは年々減少し、その傾向は2021年度以降に顕著となっている。
企業規模と監査事務所の規模には、一定の正の相関関係が見られる。
監査人の異動
2023年度は全体で196件の異動があった
そのうち大手から非大手への移動が110件と最多で、次いで非大手間での移動が66件と続く。
時価総額の規模が一定以上大きくなるほど大手から非大手への異動数は少なくなる傾向にある。また、時価総額が比較的小さな企業で大手から非大手への監査人の交代が多いことは、占有率の分析結果とも一致する。
異動後の監査報酬の増減率について、大手監査事務所から非大手監査事務所への異動では、25%が1割から2割の減少、39%が2割以上の減少となっており、大手から大手、非大手から非大手への異動の場合に比べ明らかに割合が大きい。
監査契約を継続しない場合、前任監査人の最終年度の監査業務において、監査報酬が大きく増加する現象が一部に認められる。
2023年度に異動した196サンプルのうち、分析データの揃う193サンプルを見ると、異動直前年度に、その1期前よりも監査報酬が20%以上増加した業務が51サンプル(26%)あった。
感想
毎年、同内容の分析レポートを読んでいるのですが、いずれの分析も直感と大きな相違のない結果に思えるという点において、今回も変わりがありませんでした。
一方で、監査契約を継続しない場合の、最終年度における監査報酬の増加は、増加が先か契約終了が先か詳しいことはわかりませんが、面白い現象だなと思います。
上場会社が増え続ける以上は、この傾向は変わらないのではないかと想像しています。
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