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「企業会計」2021年9月号の記事2本の感想~株式ベータ、ROIC経営~

  • 佐藤篤
  • 2021年10月12日
  • 読了時間: 3分

今回は「企業会計」2021年9月号の面白かった記事二つについて触れたいと思います。


株式ベータの意味

まずは「不思議な会計ファイナンス研究の世界」という一橋大学の中野誠教授の連載で、「経営者資本コストと金融資本コスト」と題された記事です。

ここで、経営者資本コストとは所謂ハードルレートのことで経営者の主観的な数値、金融資本コストは財務データや株価からWACCで計算した客観的な数値です。

この経営者資本コストと金融資本コストを比較すると、経営者資本コストが金融資本コストより高くなる企業が多いとの調査結果が示されています。

感覚的には納得感ありますが、その要因はと問われると、パッとは思いつきません。


この点、著者は4つ要因を提示されているのですが、そのうちの1つとして株式の個別リスク(企業特有のリスク)に触れられていました。

金融資本コスト算出の過程で株主資本コストを算定する場合、株式ベータとCAPMに基づくのが一般的ですが、ここで私が勘違いしていたのは、株式ベータは企業特有のリスクを反映している値だと思っていたことです。

CAPMは(以下、引用)「十分に分散されたポートフォリオのリスクは、構成銘柄の市場リスクの加重平均であるから、企業特有のリスクは考えなくてよい」(引用終わり)という前提のもとに利用される計算手法であり、このことは株式ベータが企業特有のリスクを排除した市場との感応度だけを表していることを意味します。


私がCAPMや株式ベータを学んだのが会計士二次試験の時でしたので、20年以上理解違いしていたことになります。勉強になりました(笑)。


ROICの欠点の克服

次は「ROIC経営の導入と組織浸透」という連載で、今回はピジョン株式会社(以下「ピジョン社」)の取り組みが紹介されています。

この連載記事で感心したのは、ピジョン社がROICに加えてPVA(= NOPAT - 投下資本 × WACC)をもうひとつの経営指標としており、両指標がバッティングする場合はPVAを優先させる経営を行っていることでした。


ROICは利益(多くの場合NOPAT)を投下資本(運転資本+固定資産)で割り返すことで求められますが、この指標を用いる欠点は分母を小さくする方向に経営が向かってしまうことです。つまりROICを改善するには分子であるNOPATを増加させるか分母である投下資本を減少させることになる訳ですが、軌道に乗るまで時間を要するような新規投資はROICを悪化させてしまうので、係る投資を躊躇してしまうという問題があります。

この点、PVAをROICに優先させることで、一時的にROICが悪化しても新規投資を行うことを可能とし、上記の欠点を補う工夫をされているとのことです。


このPVAとROICを併用する経営管理方法は他社でも取り入れやすく、参考になるものと思われます。


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