金融課税の論点、業績予想の実証分析~「会計・監査ジャーナル」2025年12月号~
- 2025年12月16日
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「会計・監査ジャーナル」2025年12月号の特集は「第46回日本公認会計士協会研究大会」でした。
その中から、投資関連のテーマ2つを取り上げます。
まず、パネルディスカッション「金融課税の論点整理」では、所得別・金融商品別の課税上の課題がまとめられていました。
(利子所得)
限定列挙による課税範囲の狭さ
必要経費控除の不可
課税方式の選択性
損益通算の制限
(配当所得)
控除制度の有効活用
みなし配当課税の範囲拡大
(信託型ストックオプション制度)
現状、課税が国税庁のQ&Aに依拠しており、法制度整備が必要
(株式譲渡所得)
損益通算や繰越控除の範囲拡大
繰戻し還付の導入
(デリバティブ取引)
他の金融所得との損益通算範囲の拡大
(暗号資産)
雑所得として扱われている現状に対する所得区分の妥当性
国外転出時課税の対象外とされていることによる税逃れの懸念
感想
暗号資産が国外転出時課税の対象外という事実は、恥ずかしながら初めて知りました。まあ、近い将来改正されるのでしょうが。
2つ目は明治大学商学部教授の奈良沙織氏による研究発表「業績予想の実証分析」の概要です。
(企業の業績予想)
主に経営者予想(会社予想)とアナリスト予想の2つに大別される
(経営者予想)
決算発表と同時に開示されることが多い
2012年には制度が柔軟化され、企業の裁量で開示形式や項目を選択できるようになったが、依然として95%以上の企業が通期予想を開示している
米国では訴訟リスクなどから経営者予想は自主的な開示であり、開示有無や項目は企業の裁量に委ねられている
経営者予想を非開示にした企業は非開示後に株価が下落、アナリスト数の減少、アナリスト予想の精度の低下などが見られ、企業と投資家の双方にとってメリットがないことが研究によって明らかにされている
(アナリスト予想)
市場における重要な指標となっている一方、日本では上場企業の約4割にしかアナリスト・カバレッジがなく、また十分なカバレッジ(5社以上)は13%程度にとどまっている
米国ではアナリスト・カバレッジが充実しており、65.7%の企業で3社以上のカバレッジがあり、情報環境は大きく異なる
(情報開示の進展(統合報告書・無形資産・社外取締役))
統合報告書の開示は日本で急増しており、企業価値やアナリスト予想の精度向上への影響も研究されているが、現状ではアナリスト・カバレッジ増加以外の明確な効果は限定的である
無形資産(研究開発費・人的資源等)の情報開示は株価や企業価値との関連性が示されているものの、アナリスト予想の精度には必ずしも直結していない
社外取締役の導入拡大は、企業パフォーマンスへの明確な効果は見られないものの、ディスクロージャーの質向上には寄与しているとの実証結果がある
感想
統合報告書の作成には各企業ともかなりの工数を割いているのでしょうが、その割に効果が限定的というのは何とも切ない話です。
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