連結子会社に対する支配の喪失と残存する投資の会計処理~「会計・監査ジャーナル」2024年8月号~
- 佐藤篤
- 2024年9月6日
- 読了時間: 3分
「会計・監査ジャーナル」2024年8月号の「アカデミック・フォーサイト」は「連結子会社に対する支配の喪失と残存する投資の会計処理」(川村義則)でした。
当該論考の問題意識については以下のように記載されています。
連結子会社に対する支配の喪失と喪失後もなお残存する投資の会計処理の問題については検討すべき問題が多いと考えられる。
正直、そのような問題意識を今まで持ったことがなかったので、興味を持って読んでみました。
現行の会計基準
子会社株式を一部売却した場合(親会社と子会社の支配関係が継続している場合に限る。)には、売却した株式に対応する持分を親会社の持分から減額し、非支配株主持分を増額する。売却による親会社の持分の減少額(以下「売却持分」いう。)と売却価格との間に生じた差額は、資本剰余金とする。なお子会社株式の売却等により被投資会社が子会社及び関連会社に該当しなくなった場合には、連結財務諸表上、残存する当該被投資会社に対する投資は、個別貸借対照表上の帳簿価額を持って評価する(「連結財務諸表に関する会計基準」第29項)。
支配の喪失と残存する投資に係る会計処理の代替案
支配の獲得に際して、非支配企業の資産及び負債の全部を認識することとの対比で言えば、支配を喪失した場合には非支配企業に帰属する資産及び負債の全額を認識終了することが反射的に導出される会計処理ということになる。
(代替案1)
残存持分についても対価を得て売却したと考え、残存する投資について支配を喪失した時点における時価を持って測定し直す方法(国際会計基準などにおいて採用されていると考えられている方法)。残存する投資は金融資産と考えられている。
(代替案2)
持分法による投資評価額に振り替える方法。ただし、支配の喪失が生じた時点における連結上の帳簿価額を非投資企業の当初の投資額(原始取得原価)とするものの、その後の持分額の変動は認識しない。当該投資は、その他有価証券に分類されることになり、その後の測定日において公正価値で評価すべきものであり、振り替えられた支配喪失時点における帳簿価額と公正価値との差額をその他有価証券評価差額金として認識する。
(代替案3)
個別財務諸表における帳簿価額とする方法。この方法の問題点は同じ投資に対して損益が2度計上される点。1度目は連結財務諸表において子会社として業績が損益認識される。2度目は一旦個別財務諸表の取得原価に戻されるので、その後の売却損益も個別財務諸表(引いては連結財務諸表)に認識される。
この損益の二重計上の問題を回避するためには、連結の範囲から除外して個別財務諸表の帳簿価格によって評価した投資については、将来の売却時点において「連結除外に伴う利益剰余金減少額」を損益外において消去する会計処理を採用する必要がある。
感想
3つの代替案、どれもそれなりに説得力があって、面白く読みました。
こういった論考を読むと、現行基準が何を重視して何を犠牲にしているのかがよく理解できるのも良い点だと思います。
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