神田眞人氏と松尾豊氏の講演録~「会計・監査ジャーナル」2025年4月号~
- 佐藤篤
- 4月18日
- 読了時間: 3分
「会計・監査ジャーナル」2025年4月号に『JICPAカンファレンス2024「信頼の力を未来へ〜持続的な企業価値向上〜」開催報告』が掲載されていました。
今回のカンファレンスの特別講演は前財務官の神田眞人氏、東京大学大学院教授の松尾豊氏のお二人で、かなりの豪華メンバーでした。
私は既にEラーニングで視聴済みだったのですが、改めて読んでみました。
神田眞人氏の講演
「激動の世界経済、国際政策対応、企業統治」と題されているだけあって、世界情勢や日本の構造問題等の大きな話がメインです。
それはそれで面白いのですが、講演の中で「G7,G20等で議論された国際課税の枠組み」に触れた部分がありまして、その内容は以下の通りでした。
GAFAのような国際的企業が現地で活動せずとも利益を上げられる構造に対し、100年に1度の大規模な課税ルール改定を目指している
各国で最低15%の法人税率を導入することで税率競争を防止する
世界総資産10億ドル超の富裕層に対し、資産額の最低2%の課税を新たに検討することとされた
国際課税の動きとしては大きな話ですが、元々実現可能性に?なところ、トランプさんが大統領になったことで、ますます厳しい状況になったのではないかと思っています。
松尾豊氏の講演
「生成AIの最新動向と企業価値向上への可能性」と題された講演です。
AIの歴史から、今の生成AIにできること、今後の技術進展までと、AIをざっくり理解するのに最適な内容だったと感じました。
以下、財務会計関連の内容と個人的なメモ書きです。
2024年のノーベル化学賞は、AIによってタンパク質の立体構造を予測する「AlphaFold」であった。大規模なニューラルネットワークと大量データを用いて学習させることで、約9割という高精度で構造を予測することに成功したが、特筆すべきは、なぜAIが9割もの確率で予測できるかを人間が理解できるように説明できないことである。多くの変数から導いた直感や経験のようなものを基にして判断していると考えられている。
生成AIの精度について、データ量・モデルサイズ・計算資源(GPU数)の増大に比例して高まる「スケール則」と呼ばれる経験則が確認されている
学習の初期段階では、モデルは訓練データを丸暗記するように精度を向上させる。この状態は過剰適合に相当するが、その後も学習をひたすら継続すると、ある時点でモデルが汎化するGrokking現象が見られる。これはモデルが丸暗記からはいわば応用力を身につける段階へと移行することを示唆している。
企業活動の中でも、財務会計に関する業務は生成AIによる運用の可能性が非常に大きい領域
将来的には、潜在的なリスクの早期発見や予実管理の効率化など複雑なタスクの自動化が可能となり、財務面の意思決定戦略を立案・実行するCFO的な存在になる可能性すら考えられる
財務会計分野において、生成AIの活用さらに広げ、深めていくためには、業界全体で共有できる基盤の整備が重要である
財務会計云々よりも仕組みの話が面白かったです。特に「AlphaFold」の話には怖さも感じました。
想像以上に「シンギュラリティ」は近いのかも知れません。
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