満期保有目的債券へのヘッジ会計の適用
- 佐藤篤
- 2023年3月17日
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先日のエントリーで、シリコンバレー銀行の破綻に関連して、満期保有目的債券について触れました。
そもそも何故、シリコンバレー銀行は金利上昇局面で多額の債券を満期保有目的に分類したのか、金利スワップ等を利用してヘッジしなかったのか等、様々な批判がなされています。
そこで今回は、日本基準における満期保有目的債券のヘッジ上の留意点に触れたいと思います。
まず、会計制度委員会報告第14号「金融商品に関する実務指針」(2019年7月4日)(以下「金商実務指針」)の161項に以下の記載があります。
満期保有目的の債券は、原則として金利変動リスク(相場変動リスク又はキャッシュ・フロー変動リスク)に関するヘッジ対象とすることはできない。ただし、債券取得の当初から金利スワップの特例処理の要件(第178項参照)に該当する場合にはヘッジ対象とすることができるものとする。したがって、ヘッジ会計を適用するためには、ほぼ満期日まで金利スワップが締結されていなければならない。債券の満期日の前にスワップを解約した場合には、満期保有目的の債券の売却があった場合と同様に、第83項に準じて、当該債券を含む満期保有目的の債券全体を他の保有目的区分に振り替えなければならない。
このように満期保有目的債券はヘッジ対象となりえないため、事後的に金利スワップを締結しても、ヘッジ会計を適用できない点に注意が必要です。
金利スワップの特例処理の要件を満たす場合はいいのですが、それでも中途解約には債券売却時と同じペナルティーが課せられます。
ただし、中途解釈にも例外的な取扱があって、金商実務指針の325項に以下の通り記載されています。
金利スワップの解約が、取引相手先の信用状態の著しい悪化等のやむを得ない理由によるものである場合は、この限りでない。
まとめますと、満期保有目的債券の金利変動リスクのヘッジについては、
ヘッジ会計は、金利スワップの特例処理のみが認められる。
特例処理を適用した金利スワップの中途解約は、債券の保有目的の変更として取り扱われる。ただし、取引相手先の信用状態の著しい悪化等のやむを得ない理由がある場合は、この限りではない。
ということになりますので、特に金利上昇が見込まれる状況においては、固定金利債券の満期保有目的への区分は慎重に判断することをお勧めします。
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