日本航空株式会社の2021年3月期決算をライバル社と比べると。
- 佐藤篤
- 2021年5月11日
- 読了時間: 2分
先週ANAホールディングス株式会社(以下ANAHD社)の決算について記事にしましたが、その流れで今週は日本航空株式会社(以下JAL社)の2021年3月期決算について記事にしたいと思います。
結論としては、JAL社の方がANAHD社よりは多少状況はマシなように感じられました。
1.まずは両社の決算の類似点について
JAL社の売上高は2020年3月期1兆3,859億円から2021年3月期は4,812億円まで65.3%の減少となっています。ANAHD社が63.1%の減少でしたので、ほぼ同じ程度と言えそうです。
当期損失が2,878億円と金額が膨大で、それを有利子負債と増資でファイナンスしている点も変わりありません。
税引前損失が4,040億円なのに対し当期損失は2,878億円と赤字幅が小さくなっているのは、法人所得税費用が1,162億円利益サイドに計上されているためで、結果繰延税金資産残高が大きく増加している点もJAL社とANAHD社で変わりありません。JAL社の繰延税金資産残高は2020年3月期1,223億円から2021年3月期2,258億円へ増加しています。
2.JAL社とANAHD社で異なる点
JAL社の当期損失は2,878億円ですが、これを2020年3月期の当期利益520億円で割り返すと5.5となり、単純計算ですが、2021年3月期の損失を挽回するのに6年弱を要することになります。同じようにANAHD社で計算すると4,076億円÷259億円=15.7となり、挽回には16年弱を要する計算になります。ANAHD社はJAL社の実に3倍弱の期間を要する結果となっています。
総資産残高はANAHD社が6,477億円増加しているのに対し、JAL社は1,250億円の増加に留まっています。業況が悪い時は総資産残高が少ない方が利益を出しやすい訳でして、それにも関わらずANAHD社は総資産を増やさざるを得なかったという点に厳しさを感じさせます。
繰延税金資産に関しては、JAL社の利益剰余金残高は2021年3月期3,529億円で繰延税金資産残高2,258億円を上回っています。繰延税金資産残高が利益剰余金残高を上回っていたANAHD社とはこの点が異なっています。
ちなみに、繰延税金資産残高の大幅な増加についてJAL社は「追加情報」で説明されています。2021年3月期決算の特徴的な点ですので、何等かの説明が必要と判断されたのでしょう。
3.まとめ
こうして両社の決算を比べてみると、JAL社の方が身軽だった分、今般のパンデミックによるダメージも比較的軽く済んだような印象を持ちました。
余談
JAL社は2019年4月1日を移行日として国際会計基準へ移行しています。日本基準との差異調整表が決算短信にも記載されており、これを眺めると大まかな日本基準と国際会計基準の違いを把握出来ますので、勉強兼ねて読んでみるのもいいかも知れません。そういう私も国際会計基準は詳しくないので、日を改めて読んでみるつもりです。
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