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役員への責任追及に係る裁判事例~「会計・監査ジャーナル」2026年2月号~

  • 3月24日
  • 読了時間: 5分

「会計・監査ジャーナル」2026年2月号の連載「企業法務」は「役員責任追及に関する最近の裁判例からの示唆」(松井秀樹)でした。

その中からハイアス・アンド・カンパニー(以下「ハイアス社」)事件(東京地判令和7年3月27日)を取り上げます。

 

事件の概要

  • 上場前からの不正会計が問題となり、そのために、特別調査委員会・第三者委員会の費用、有価証券報告書の訂正についての監査費用、上場契約違約金、法務アドバイザー費用、訴訟のための弁護士費用の支出を余儀なくされ、損害を被ったと主張して、ハイアス社がこれに関係する取締役に対して、任務懈怠を主張して、損害賠償請求訴訟を提起した(第1事件)

  • ハイアス社の取締役が、債務発生原因が存在しないことを知りながら、他社に対して、支払約定書を作成・交付した行為が問題となり、そのために、社内調査委員会・第三者委員会の費用、法務アドバイザー費用、訴訟のための弁護士費用の支出を余儀なくされ、損害を被ったと主張して、同社がこれに関係する取締役に対して、任務懈怠を主張して、損害賠償請求訴訟を提起した(第3事件)

 

判決のポイント

  • 第1事件の特別調査委員会・第三者委員会の費用

    • 本判決は、第1事件の特別調査委員会の調査の補助業務を行った会社2社の費用については、中間報告書や最終報告書に調査補助者として記載されていないことから、その業務内容は、委員会の調査にも反映されていないと推認されるとして、相当因果関係を否定した

    • 「第1事件特別調査委員会が行った調査と第1事件第三者委員会が行った調査とで重複している部分については、二重に損害として認めることは相当でない」として、特別調査委員会の費用について、50%の限度で相当因果関係を認めた

    • 第1事件の第三者委員会の費用についても、「具体的な不正会計の調査とは別に、原告の組織風土や組織運営の問題に関する状況やその分析等については、元々企業として向き合うことが避けられない自社組織自体の問題への対応ないし内部体制の構築・整備の一環として、原告自らの責任及び負担において行うべき性質のものである」と指摘し、また、最終調査報告書の内容と中間報告書の内容が重複している部分があるとして、一部について相当因果関係を否定した

  • 第1事件の監査費用等

    • 任務懈怠に起因して行われた訂正以外の訂正事項に係る部分については、相当因果関係を否定するなどし、監査法人に支払った金額の60%の限度で相当因果関係を認めた

  • 第1事件の上場契約違約金

    • 本件取引に係る財務諸表等の提出を問題とするものであるとして、その全額について任務懈怠との間の相当因果関係を認めた

  • 第1事件の法務アドバイザー費用等

    • 「顧問弁護士に対する法律相談は、広く様々な内容を含み得るもので、社内での検討にとどめるか顧問弁護士に相談するかも任意に決められるものであり、その料金を直ちには相当因果関係のある損害とは認めがたい面がある」などとして、本件の事実関係を踏まえて、相当因果関係を否定した

    • 第1事件の訴訟の弁護士費用についても、不法行為に基づく損害賠償請求の場合と異なるなどとして、賠償を認めていない

  • 第3事件の社内調査委員会費用及び第三者委員会費用

    • 当初、社内調査委員会を設置して調査を行い、そこで判明した事実も踏まえて、その後に第三者委員会を設置したものであるが、社内調査委員会についてはその設置の必要性を否定し、第三者委員会においても同一項目の調査・分析を行っていることを指摘して、社内調査委員会の調査に独自の意義を認めず、その費用については相当因果関係を否定した

    • デジタルフォレンジック調査の費用について、「ヒアリングだけでなく全てのデータのデジタルフォレンジック調査まで行う必要性は認めがたい」とし、また、取引先及び株主に対するアンケート調査にかかる実費については、「改善報告書に記載された旧経営陣の影響力の排除、経営者の暴走の抑止、けん制機能の強化のための適正なコーポレート・ガバナンス態勢の確立のための調査については、本件不法行為の存否にかかわらず、原告自らの責任及び負担において行うべき性質のものとして、いずれも相当因果関係を否定した

  • 第3事件の法務アドバイザー費用等

    • 「法律相談は様々な内容を含みうるもので、社内での検討にとどめるか社外の弁護士に相談するかも任意に決められるとし、また、上記の取引先・株主に対するアンケート調査にかかる実費について述べた理由と同様の理由を述べるなどし、相当因果関係を否定した

  • 第3事件の訴訟費用

    • 支払約定書に係る債務不存在確認訴訟に係る弁護士費用については全額を、第3事件の訴訟(本件訴訟)の弁護士費用については相当額を損害と認めた

 

本判決の実務への示唆

  • 本判決は「損害の公平な負担」という観点を明示し、各費目ごとに相当因果関係の検討を精緻に行った点に特徴がある

  • 一方で「企業において不正行為等の疑義が生じ、特別調査委員会、第三者委員会等による調査が必要となった場合においても、どのような態勢の委員会を設置等し、どのような範囲の調査を行うこととするのか、それにどの程度の費用を投ずるのかは当該事案の解明に必要な調査の内容及び難易度、当該企業の規模及び当該案件の規模、当該企業の置かれている状況など諸般の事情を総合的に勘案して、当該企業が裁量的に判断することであり、それに多額の費用を投じて調査を行うことが、当該企業にとって意義があり上記裁量的判断として不合理とは言えない場合であっても、その支出額について当該不正行為に関与した取締役等に対する損害賠償請求が裁判で認められるべきかについては、別途、損害の公平な分担という見地から、相当因果関係の有無(相当因果関係のある範囲・金額)が事案ごとに吟味されることになる」と判示している点に留意が必要

 

感想

懲罰的な感じはなく、割と公平な判断のように思われました。

とは言え、トータルでは被告側にかなりの金銭的負担が課されてはいるのですが。

 

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