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将来予測情報を活用した引当の開示例

  • 佐藤篤
  • 2023年4月25日
  • 読了時間: 3分

Jicpa主催の「銀行の引当開示の状況(2021年3月期-2022年3月期について)」をオンライン受講したのですが、その中で将来予測情報を活用した引当の開示例について、解説されておりました。

現行実務ではあまり採用されていない方法とのことで、興味を持って視聴しました。

以下、開示例のエッセンスです(当該研修資料(金融庁)から抜粋)。


会計上の見積りの変更注記

  • 景気悪化等により予想される信用リスクを適時に貸倒引当金へ反映させることで、景気変動に左右されずに、資金繰り支援等の安定的な金融仲介機能の発揮ができると考え、その手法等について検討した。

  • 一般貸倒引当金(「要管理債権」を除く)については、細分化したグループ毎に倒産確率に基づく損失率を求め、これにマクロ経済指標の予測等に基づく、将来見込み等必要な修正を加えて算定する方法に変更。


会計上の重要な見積り注記


(算出方法)

  • 正常先、要注意先(要管理先を含む)に係る債権については過去数値と過去の貸倒発生確率の関連性に基づき構築した予想損失率算定モデルへマクロ経済指標の将来の予測値をおくことにより、予想損失額を算定

  • 予想損失率算定モデルはバック・テストにより定期的に検証を行い、その結果を取締役会に報告する。

  • マクロ経済指標の将来の予測値は、各期末時点から向こう1年程度の景気予想等に基づいたメイン・シナリオに、景気循環を想定したリスク・シナリオを加えて算定

  • リスク・シナリオは景気循環を踏まえた景気悪化シナリオを想定しており、同シナリオの発生可能性を一定程度メイン・シナリオに加味することで「マクロ経済指標や損失に関して予期せぬリスク事象を一定程度織り込む」または「既に発生しているリスク・イベントに関して経済への影響の予測が困難な事象に対応する」ことを想定

  • 外部環境等の著しい変化により特定のグループに係る債権の信用リスクが高まっていることが想定される場合には、同グループにおける過去最も高い貸倒実績率を予想損失率として適用するなどの方法により、予想損失率に所要の修正を加えて貸倒引当金を算定


(主要な仮定)

  • 将来のマクロ経済指標は、主に株価の推移や〇〇県内の景況感を表す指標のほか、〇〇県内の雇用状況を示す指標に基づき設定

  • デフォルト率は、景気予測と過去の景気推移及び倒産実績をもとに統計的に推計のうえ算定

  • 景気指標にはGDP成⻑率を使用

  • 景気予測にあたっては、将来の景気見通しに基づく2つのシナリオ(ベースシナリオとダウンサイドシナリオ)から1年間の予想GDP成⻑率を算定し、原則半期毎に取締役会で決定


(モデルの考え方)

  • 貸倒の発生確率と相関性の高いマクロ経済指標の将来予測を行い、マクロ経済指標と貸倒実績との相関性から算出した関数を利用してマクロ経済指標の予測値より予想損失率を求める。

  • 当該予想損失率と過去の一定期間における貸倒実績率の平均値とを比較考量し、それぞれに基づき算定された金額の差額を予想損失額に反映



感想

将来予測指標として使うならGDP予想かなあ、と何となく思いながら聴いていたのですが、どうやらその通りのようでした。

決算実務上は、修正後発事象を考慮すると、GDP予想値に常に下振れリスクを織り込んで算定するのがセーフティーかな、と思いました。

あとはGDP予想の一点張りではなく、他の将来予測指標をいくつか織り交ぜて、特定指標の下方修正が影響しないようにする方法もあるかと思います。

いずれにせよ、重要な会計上の見積りには、多少のバッファーを持っておきたいものです。


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