多数決による金融債務調整制度の概要(その2)~「会計・監査ジャーナル」2025年11月号~
- 2025年12月12日
- 読了時間: 3分
前回のエントリーで、「会計・監査ジャーナル」2025年11月号に掲載されていた「多数決での金融債務調整の導入―早期事業再生法の成立とその概要」(川端遼)を取り上げましたが、その中の「強制執行等中止命令・担保権実行中止命令」及び「プレDIPファイナンス」について触れられずじまいでしたので、今回改めて取り上げます。
まず、その前段階として、指定確認調査機関による確認と一時停止要請について触れておきます。
指定確認調査機関による確認
申請を受けた指定確認調査機関は、確認調査員を選任の上、法3条1項に定める事項を審査する
上記事項が確認された場合、指定確認調査機関は、その旨を対象債権者に通知する(法3条7項)。この確認により、早期事業再生手続が正式に開始し、当該確認の時点が対象債権の基準時になる(法2条3項等)
指定確認調査機関による一時停止要請
指定確認調査機関は、上記の確認の後速やかに、事業者の要請の有無にかかわらず、全ての対象債権者に対し、対象債権の回収その他省令で定める回収行為をしないこと(いわゆる一時停止)の要請を行う
一時停止の対象期間は、権利変更議案が成立または不成立となった時点まで
対象は、保全部分を含めた全ての対象債権(以上につき、法6条1項)
事業者は、原則として対象債権にかかる債務の弁済が禁止される(同条2項)
一時停止要請はあくまで指定確認調査機関の任意の要請であり、法的拘束力はない
対象債権者の全員同意を得ることは法令上求められていない
強制執行等中止命令・担保権実行中止命令
指定確認調査機関による一時停止要請には強制力がないところ、一部の対象債権者による回収行為等が行われた場合の措置
裁判所は、指定確認調査機関による確認後、事業者または対象債権者の申立てにより、以下を命じることができる
①既に行われている対象債権に基づく強制執行、保全処分等の中止(法7条)
②対象債権を担保債権とした担保権の実行手続の中止(法8条)
①の要件は「必要があると認めるとき」かつ「対象債権者に不当な損害を及ぼす恐れがない場合」であり(法7条1項)、民事再生法上の強制執行等中止命令の要件と同様(民事再生法26条1項2号)
②の要件は「対象債権者の一般の利益に適合し」、かつ「担保権者に不当な損害を及ぼす恐れがないものと認めるとき」(法8条1項)で、やはり民事再生法上の別除権中止命令の要件と同様(民事再生法31条1項)
倒産手続の申立てや預金拘束等は上記の中止命令でカバーされない点に留意
プレDIPファイナンス
資金繰りのために早期事業再生手続中に実行される融資のこと
プレDIPファイナンスについて法69条1項に基づく指定確認調査機関の確認を受けると、後に民事再生や会社更生に移行した場合に、当該プレDIPファイナンスについて他の再生債権や更生債権と異なる取扱い(優先的な弁済)を行う旨を定めた再生計画案や更生計画案が衡平性の観点から問題ないか(民事再生法155条1項但書、会社更生法168条1項但書)を裁判所が判断するにあたり、上記確認がなされていることが考慮される(法70条、71条)
事業再生ADRでは確認の対象となるプレDIPファイナンスの借入期間は手続終了(第3回債権者会議成立等)までとされていた(産業競争力強化法56条1項柱書)のに対し、早期事業再生計画に資金調達の定めがある場合は、当該資金調達の実行時までの借入が確認の対象とされた(法69条1項)
コメント