同意なき買収のターゲット企業の特徴とその後~「企業会計」2025年9月号~
- 佐藤篤
- 9月26日
- 読了時間: 2分
「企業会計」2025年9月号の特別企画「同意なき買収のファイナンス」から『「同意なき買収」は何を変えたのか?:動機、株主価値、コーポレート・アクションへの影響』(川本真哉)を読んでみました。
内容としては、同意なき買収についての経済的機能に関するデータ分析で、50件程度の案件が対象とのことです。
件数は少ないですが、そもそも同意なき買収自体がそう多くはないので、仕方のないところです。
以下、結論部分のメモ書きです。
先行研究 Morck et al.(1988)
1980年代前半のアメリカにおける敵対的買収を対象とした研究
創業年数が古く、企業規模、成長性、トービンのシンプルq、資本的支出、負債比率が低い企業ほどターゲットになる確率が上昇することを明らかにした
ターゲット企業の特徴の分析結果
他の上場企業に比べ、ROE、ROAが低い
所有構造については、外国人持株比率が高く、役員持株比率が低いといった、流動的な所有構造を持つ企業がターゲットになっている
株式持合い比率はその他上場企業と平均値が変わらず、持合いはもはや買収防衛の手段として機能していない
ただしストラテジック・バイヤーに限定した場合、上記の特徴は当てはまらなかった。一方で赤字期の配当支払いが介入の契機となっていた。
TOBによる株価効果
イベント・ウィンドウ(同意なき買収が発生した前後数日間)の当該銘柄の収益率とマーケット・インデックス(TOPIX)の収益率の差を異常リターンと定義し、検証を行った結果、短期的にも中期的(約1年後)にも株価パフォーマンスは良好だった
買収か資本参加で比較検討した結果、買収よりも資本参加の方が累積異常リターンは高い傾向にあった
TOB解消案件の分析
ROAやROEについては有意な改善が観察されないものの、PBRは伸長した。その要因は、配当性向の増加によると推察される。
社外取締役は増員される一方、雇用は削減される傾向があった
感想
低ROEや流動的な所有構造といった要因について意外性はありませんが、赤字期の配当支払いというのは新たな気付きでした。
また、TOBが成立して、その後に雇用が削減されるのは何となく理解できますが、解消されても雇用削減されてしまうのは、従業員にとっては切ない話です。
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