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原価計算研究から示唆されること

  • 佐藤篤
  • 2023年10月31日
  • 読了時間: 3分

今は業務内容的に原価計算に触れる機会はないのですが、原価計算自体は好きで、関連研修があると、実務には役立たないにも関わらず、つい聴きたくなってしまいます。


先日も、「トヨタ生産方式など現代の生産活動に適合した生産管理会計とはどのようなものか」と題された研修をウェブで受講しました。

講師は大阪公立大学経営学研究科准教授の新井康平先生です。


以下は、その研修の中で個人的に面白かった箇所のメモ書きになります。



日本における標準原価計算

  • 日本でも多くの企業が標準原価計算を採用しているが、その内容はタスク・コントロールを目的とした原価標準の設定が行われているわけではなく、予算管理が主目的となっていることが多い。


実証会計研究の示唆

  • 生産キャパシティの上限に近い状況で生産活動を行うと、変動費の増額に加えて変動比率が上昇するという追加の「混雑コスト」の現象が起きる。

  • 過剰生産を行うと、固定費を製造原価ではなく棚卸資産に配賦可能となるため、利益を一時的に増加させてみせることができる。日本企業においても、目標利益の達成のために過剰生産が行われているという証拠がある。


混雑コスト

  • キャパシティの稼働率の高い状態において、ある一部分で生じた小さな問題や障害が、全体に影響を及ぼすことによって発生する大きなコストや損害のこと。

  • 混雑コストを避けるために、環境の不確実性が高い状況下では、企業は(変動費化かではなく)固定費化することが実証されている。


過剰生産を含む実体的裁量行動

(増大要因)

  • 負債比率が高い

  • 経営者交代前

(減少要因)

  • 規模が大きい

  • 金融機関の株式保有比率が高い


在庫構成割合の変化

IT技術の進展により経済的発注量は小さくなっている。このことはジャストインタイム購入を実施しやすくなっていることを意味する。

にもかかわらず、日本企業の長期的なトレンドは、総資産材料費率は増加傾向、総資産仕掛品率や総資産完成品率は減少傾向となっている。

このことは、材料を安定的に所有し、市場動向に応じて生産を行うという企業実態を明らかにしている。



感想

学びの多い研修でした。

特に、不確実性が高い環境下において企業が固定費化を選択するというのは直感に反する

結論で、いろいろと考えさせられました。


また、負債比率の高さと過剰生産による利益調整については、負債比率が高いから過剰生産を行うのか、過剰生産により製品在庫残高が増えた結果、運転資金が増加して負債比率が高くなったのか、どちらの要因が大きいのかが気になるところです。

が、いずれにしても、負債比率が高く且つ営業キャッシュ・フローが減少している企業には要注意だな、と改めて思わされたのでした。

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