リース会計の改正論点~転リース~「企業会計」2021年11月号
- 佐藤篤
- 2021年12月14日
- 読了時間: 4分
更新日:2022年6月26日
前2回に引き続き、「企業会計」2021年11月号上で特集されていた「新たなリース会計基準5つの論点」に係るエントリーです。今回は当該特集内の一記事「リース会計処理の課題:転リース」を取り上げます。
現行日本基準での転リースの会計処理
中間の貸手は原リース取引と転リース取引の双方がファイナンスリース取引の場合のみオンバランスされ、両方または何れかがオペレーティングリースの場合には通常の賃貸借取引に準じた会計処理が適用される。
IFRSでの転リースの会計処理
原リースに関して使用権資産が計上される。
転リース取引については貸手の会計処理が適用される。
中間の貸手の転リースがファイナンスリースに分類される場合
貸借対照表上、原リースに係る使用権資産の認識を中止し転リースへの投資(リース債権)を認識する。原リースに係るリース負債は計上し続ける。
損益計算書上、原リースに係る使用権資産と転リースへの投資との差額を利得または損失として認識する。また、転リース期間中、転リースに係る金利収益と原リースに係る金利費用を認識する。
中間の貸手の転リースがオペレーティングリースに分類される場合
貸借対照表上、原リースに係る使用権資産とリース負債を計上し続ける。
損益計算書上、使用権資産に係る減価償却費とリース負債に係る金利費用を認識する。また、転リースによるリース収益を認識する。
中間の貸手の転リースの分類
論点
原資産のリースから生じる使用権資産を対象として分類を決定するのか、従来通り原資産を参照して分類するかが問題となる。なぜなら、使用権資産の方が通常金額は小さくなることからリース期間も短くなり、フルペイアウトの要件に照らした場合、使用権資産を参照する方が、転リースがファイナンスリースに分類されやすくなるため。
この点、IFRSは使用権資産、米国基準は原資産を基に分類するという違いがある。日本はIFRSベースでの改正の方向。
IFRSベースでの改正がなされた場合の問題点
多くの転リースがファイナンスリースとして分類され、中間の貸手において認識の中止と新たな資産の認識を繰り返す煩雑な実務が生じる可能性がある。IFRSでは原リースが短期リースに該当する場合に転リースをオペレーティングリースに分類して処理する簡便な取り扱いがある。
中間の貸手のリースの会計処理
現行日本基準の会計処理と改正の方向性
借手と貸手のリース取引がファイナンスリース取引に該当する場合、貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料の差額が手数料収入として純額計上されるが、IFRSでは総額表示が義務付けられており、IFRSに則った形での改正が検討されている。
IFRSベースでの改正がなされた場合の問題点
上記は不動産一括借上事業者の貸借対照表に多大な影響を及ぼす。ASBJの審議では特段例外的な取り扱いを設けるといった方向での提案はなされていない。
また、パススルー方式の場合、マスターレッシーは何のリスクも負っていないため、経済的実態を反映するという観点からすれば、別々の契約として会計処理すべきか判断の余地はある。
IFRSや米国基準にはこの取引を扱う規定はなく、一般には別々の契約として扱うと考えられる。
収益認識会計の本人と代理人の区分の論点との整合性も考慮される必要があるのではないか。
感想
中間の貸手の転リースの分類については、IFRSで設けられている短期リースの簡便処理を日本基準の改正にも取り入れることで十分な気がします。
一方で中間の貸手の会計処理については、中間の貸手が何らのリスクも負担していない場合に収益と費用を総額で計上するのは、収益認識会計との整合性の観点から疑問を感じます。
そうは言ってもIFRS(と米国基準)では収益と費用の純額計上は特段認められていないようなので、日本基準だけ異なった規定とするのは難しいだろうなとも思います。
相続対策関連の賃貸物件増加と、それに伴うサブリース取引はかなりのボリュームになっていますので、想像以上に影響は大きい気がします。
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