カゴメ㈱の開示への取組と課題~「企業会計」2021年11月号~
- 佐藤篤
- 2022年1月25日
- 読了時間: 3分
「企業会計」2021年11月号で「有報・事業報告一体開示の障害」と題した特別企画が組まれており、その中で「カゴメ開示実務から見る一体開示の問題点と方向性」という記事がありました。カゴメ株式会社(以下「カゴメ社」)は2011年度から株主総会日前に有価証券報告書を提出している、開示への意識が高い会社です。
弊ブログの2022年1月14日のエントリーでKAMに対するアナリストの視点をとりあげたのですが、その中で株主総会日前の有価証券報告書の提出について触れたこともあり、カゴメ社の取組みを知るべく、当該記事を読んでみました。
カゴメ社の決算開示体制と年度末決算スケジュール
財務経理部門の全体制は総勢33名で構成。IR機能も有しているのが特徴。
1月13日がグループ各社からの決算数値回収締切日。
連結決算数値を1月16日迄に作成し監査法人へ提出。
1月20日決算短信のドラフト完成。
2月3日決算発表。その時点まで招集通知含む事業報告等の草案も完成している。
事業報告等は2月17日取締役会承認を受け、同日ホームページ上で開示。
3月4日に招集通知を郵送。
有価証券報告書は、事業報告等の草案完成後約2週間をかけて全体草案を完成し、3月上旬までに監査法人の監査を受ける。3月12日提出。
スケジュール感としては、有価証券報告書の提出日以外では、決算短信ドラフトの1月20日は早いなと感じましたが、それ以外は、人員体制含め、オーソドックスな印象です。
有報・事業報告一体開示への課題
招集通知の発送は株主総会日から2週間前のため、事業報告等は有価証券報告書よりも早い日程で完成させる必要がある。この問題は、株主総会日の法定期限を延長することができれば解消するか、一体開示のために株主総会の開催日や事業報告等の開示を遅くすることは、制度上可能であったとしても、株主にとってはデメリットしかない。
カゴメ社は株主数が多く、招集通知の印刷、郵送にかかるコストが大きい。そのため再発送は絶対に避けたい。事業報告等の開示内容を作成し、会計監査が完了した後も、招集通知への反映、ページ数も含めて印刷ゲラの入念な調整を印刷会社と共に行う期間は相当程度必要で、そのための期間を2週間確保している。これが一体開示の障害になっている。
上記の点、2023年6月までの法改正で、事業報告等の電子提供をWEBで1週間早めることを条件に、紙面送付を行わないことが出来るようになり(招集通知の株主への紙面送付は引き続き必要)、紙面送付にかかっていた2週間の工数を省略できるようになる。
一方、事業報告等のWEB開示期限は株主総会の3週間前となり、一体開示を行う場合、有価証券報告書も同期限までに作成することになる。進行期決算と並行しながら既に終わっている年度決算開示に多くのリソースを投入するのは難しい。
会計監査期間の確保も課題。
いずれもごもっともです。
特に株主総会の3週間前までに有価証券報告書を作成し、会計監査も終えるというのは、会計監査人の立場からも困難な気がします。
余談
カゴメ社では、個人株主、投資家向けの決済説明会などを開催し、決算情報の作成者が個人株主、投資家に対して決算内容を直接説明し質疑に答える場を設けているとのことです。
これは面白そうだと思い、私も株主になろうと思ったのですが、カゴメ社の年度決算期末である12月末を既に経過しており、2021年度の説明会に参加することは叶わないので止めておきました。
それはともかく、こういった取り組み姿勢にもカゴメ社の開示への意識の高さが見えてきます。
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