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オペレーティング・リースの認識で経済的影響は生じるのか~「企業会計」2022年5月号~

  • 佐藤篤
  • 2022年7月12日
  • 読了時間: 3分

弊ブログでは以前リース会計基準改正の論点をまとめましたが、今回はそれに関連して、「企業会計」2022年5月号の一記事「オペレーティング・リースの認識で経済的影響は生じるのか」を読んでみました。

当該記事の目的は「IASBとFASBが公表した新リース会計基準がどのような経済的影響を与えたのかを理解するため、最新の研究動向を整理する」とのことです。

以下、当該記事のメモです。


IASBとFASBがリース会計基準を見直した背景

  • オペレーティング・リース取引のオフバランスに対する情報利用者からの批判。


リース会計基準見直しに対する経営者や業界団体の主張とそれを裏付ける研究結果

  • オペレーティング・リース取引の認識は財務レバレッジに影響を与えるため、新基準の適用はオペレーティング・リース取引の利用、設備投資行動、ひいては雇用に対して悪影響をもたらす。

  • 1995年から2015年までの期間(新リース会計基準適用前)を対象とした、ファイナンス・リース取引の認識を要求する会計基準の適用国と非適用国を比較対象とした研究結果によると、適用国では平均して14パーセントの設備投資の減少と8.2%の雇用の喪失が生じたことが示されている。


上記に対する反論とそれを裏付ける研究結果

  • 投資家はリース取引を評価するために注記情報を利用しており、オペレーティング・リース取引が負債として新たに認識されたとしても、その投資意思決定に影響はないことから、経済的影響はほとんどないと先行研究は主張している。

  • 1990年から2016年まで(新リース会計基準適用前)の上場企業対象に分析した結果、オペレーティング・リース取引の利用要因は主に非報告インセンティブ(注)によるものであることが示されている。

(注)報告インセンティブ;オフバランスを目的とする利用のインセンティブ

非報告インセンティブ;税制やファイナンス目的でのリース利用のインセンティブ


米国における新基準適用前期間2011年から2014年と適用後期間2016年から2019年とを比較し、新リース会計基準適用の影響を観察した研究結果

  • 基準適用前にオペレーティング・リース取引を多く利用していた企業は、基準適用後、新規のオペレーティング・リース取引を減少させている。

  • 基準適用後、オペレーティング・リース取引の契約期間が短期化していることが発見されている。

  • オペレーティング・リース取引を減少させた企業は設備投資を増加させており。リースから資産購入への切り替えが生じていることを発見した。

  • 株価、格付、雇用への影響も追加調査し、基準適用後に雇用は増加し、格付は向上している結果を得ている。高コストのオフバランス融資の利用が減少するなどのコスト削減効果によってこの結果がもたらされたとの解釈。


感想

オペレーティング・リース取引のオンバランス化によって通常は財務レバレッジが悪化するため格付には悪影響と思われますが、逆に向上しているというのは意外な結果でした。それだけリースは高コストだということなのでしょう。

リース業界には厳しい研究結果で、それ故日本基準におけるリース会計基準改正への反発を強めるのは必至のように思われます。

一方で銀行業界には有利な研究結果で、リース会計基準改正の旗振り役になってくれるかも、というのは期待しすぎでしょうか。


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