のれん非償却への反論~「会計・監査ジャーナル」2023年7月号~
- 佐藤篤
- 2023年6月16日
- 読了時間: 2分
以前、弊ブログで「IASBプロジェクトの最新動向」を取り上げました(リンク)。
今回はその続きで、「会計・監査ジャーナル」2023年7月号『IASBセミナー「IFRS会計基準をめぐる最新動向」開催報告(後編)』から、「のれん」プロジェクトに係るパネル・ディスカッションの一部を取り上げます。
プロジェクトの直近の動向
2022年11月に減損のみのアプローチを維持することを暫定決定した。
これを受けて、プロジェクトを「基準設定」フェーズに移行することが、2022年12月のボード会議において決定された。
現状の減損のみモデルを維持することを暫定決定した理由
既存の会計基準を変更するだけの、償却モデルが減損のみモデルよりも機能することを裏付ける十分な証拠を入手することができなかったこと。
FASBが2022年6月にのれんに関するプロジェクトについて優先順位を下げ、基準開発計画から除外することを暫定決定したこと。
IASBの当該決定に対する反論(日本製鉄株式会社 松本氏)
のれんは時の経過とともに価値が減耗する資産であることから、償却すべき資産であることが明白。
減損のみモデルの適用は自己創設のれんの計上を結果として認めてしまっている。
償却の再導入への反論としての耐用年数の算定ができないという議論について、投資判断の過程において回収年数を算定するプロセスを経ており、当該期間にわたる超過収益力を有していると見積もって投資するため、なぜ耐用年数の算定が否定されるのか、若干理解に苦しむ。
のれんにかかる重大な会計不正が起きたタイミングで償却の再導入の検討に入るといった事態になる可能性もあり、本来あるべき会計を定めるはずの会計基準が、そうした重大な問題事象の発生を受けて後追いで対応することになる事態が想定されることは、会計基準のあり方として適切ではないのではないか。
感想
私はのれん償却派で、上記の日本製鐵㈱松本氏の主張には「御尤も」の言葉しか出て来ません。
一方で、IFRS適用企業はのれん非償却を選好しているものとばかり思っていたので、少々意外な気がしました。
のれん非償却のデメリットは、のれん減損額が相対的に多額になる点にある訳ですが、結果として思い切った新規投資や株主還元策が取りづらくなるのかも知れません。
PBR1倍割れ解消が叫ばれる中、IFRS適用企業では、のれん非償却がその足かせになっている面もありそうです。
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