IASBプロジェクトの最新動向~「会計・監査ジャーナル」2023年6月号~
- 佐藤篤
- 2023年5月23日
- 読了時間: 3分
「会計・監査ジャーナル」2023年6月号に掲載されている『IASBセミナー「IFRS会計基準をめぐる最新動向開催報告」前編』の「IASBプロジェクトの最新動向」(鈴木理加理事)を読んでみました。
以下、個人的に興味深かった箇所のメモ書きです。
のれんの償却の再導入の検討
2022年11月に現在の減損テストのみのモデルを維持するという審議の結果となった。
現在、IFRS会計基準を適用している全ての企業が、のれんについて減損のみモデルを利用し、関係者もその情報を利用している環境において、このモデルを変えるだけの説得力のある証拠が十分には揃っていないという結果に基づき、現状モデルの維持という結論になった。
純損益計算書
現状のIFRS会計基準において、営業損益の定義はなく、各社各様の解釈に基づいて定義付けされている。係る状況では、企業間の財務状況の比較分析が困難であるというフィードバックへの対応。
少なくとも一貫した項目が含まれるように定義付けした営業損益を基点として分析できるようにすることが、本プロジェクトで実現を目指していること。
基本的には、投資及び財務のカテゴリーに含まれないものが営業利益に含まれることになるが、主要な事業から発生する収益・費用が原則として営業利益に含まれるというのが前提にある。
日本の関係者から特に強い要望があったのは、「関連会社及び共同支配企業からの収益及び費用」の掲載場所について、営業のカテゴリーの中に入れて示したいという点。
他方で、税引後の金額であるというこの会計処理の特質もあり、投資家からは、営業利益を含めることへの強い反対が示された。
結論としては「関連会社及び共同支配企業からの収益及び費用」は営業カテゴリーに含めないこととした。
しかし、営業損益と「関連会社及び共同支配企業からの収益及び費用」の合計を小計とした場合は、特定された小計として、経営者業績指標(MPMs)の開示要求の対象とはならない。
注記における性質別の営業費用の開示
売上原価、販売費及び一般管理費のような費用機能別分析による表示が行われている場合、費用性質別分析による開示を求めることが提案されている。
これについて、連結ベースで作成することは非常にコストがかかるというコメントが多く寄せられた。
結論としては、減価償却費、償却費、従業員給付、減損及び棚卸資産の評価減の金額について、どの機能別表示項目に含まれるのかを開示要求する方法を最終的な基準に含めることを検討している。
これに対しても依然として一定のコスト負担があるというフィードバックがあり、その点も考慮して最終基準の検討をしていく。
感想
個人的には、のれんは償却派なのですが、IFRSが非償却派であることは何となく理解できるところです。
また、営業損益について、IFRS適用企業に関しては「使いにくさ」を感じています。
企業によっては「コア営業利益」等の名称で日本基準の営業利益に近い数値を開示しているケースも見られますが、調整内容が各社まちまちなので、企業間比較には適していません。
いい方向に変わってくれることを期待しています。
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