「その他の記載内容に関する監査人の作業内容及び範囲に関する留意事項」を読んで
- 佐藤篤
- 2021年10月26日
- 読了時間: 3分
弊ブログでは、過去に月刊「企業会計」のその他の記載内容に係る特集について記事にしましたが、それに関連して、2021年10月12日に日本公認会計士協会から「その他の記載内容に関する監査人の作業内容及び範囲に関する留意事項」(以下、当該ペーパー)が公表されましたので、一読してみました。
そこで気になったポイントを記事にしたいと思います。
対象、範囲
まず、その他の記載内容への対応は、法定監査のみならず任意監査にも求められる点に留意が必要です。
また、検討する対象、範囲については当該ペーパーに以下のように記載されています。
検討の対象は、利用者にとっての重要度や金額の大きさ、慎重な取り扱いを要する項目かどうか等を考慮した上で選択すること。
検討の際に、監査人はその他の記載内容の誤りが重要な誤りとなり得る項目に焦点を当てることがある。
あくまで検討する対象は監査人の判断でチョイスするということになるようです。
当該ペーパーには上記を踏まえて検討対象となる箇所の例示が記載されていますが、これについての違和感はありませんでした。
監査人の作業内容
当該ペーパーでは、どういう手続を実施するかは職業的専門家としての判断に係る事項のため、記載される全ての内容について一律に監査調書を参照することは要求されていない、とされています。
そして、監査人の作業内容の例としていくつか例示列挙されているのですが、以下の二つについては、私の予想を超えるレベルの詳細な作業内容でした。
重要な海外事業の詳細な記述において、監査の過程で得た知識と重要な相違がないかどうかに関する裏付けのため、当該領域の監査を実施した構成単位の監査人に質問を行う。
財務諸表の数値とは直接関係ないが会社が目標とする主たる経営指標(例えば新規出店店舗数新規顧客獲得数等)の記述について、企業及び企業環境の理解で得た知識と照らし合わせて検討する。
統合報告書等
統合報告書等については、財務諸表及び監査報告書が含まれているか否か、含まれている場合は法定監査か任意監査かで場合分けされます。
財務諸表及び監査報告書が含まれていない場合はその他の記載内容には該当しない。
任意監査の財務諸表及び監査報告書が含まれる場合はその他の記載内容に該当する。
法定監査の財務諸表及び監査報告書が含まれる場合、それ以外の部分はその他の記載内容として手続の対象となっていないことから、利用者の誤解を招かないような対応(例えば脚注における計算書類等及び監査報告書は転載歳であることの記載)がなされているかに留意する。
特に3つ目の法定監査の財務諸表及び監査報告書が含まれる場合については、現状このような取扱になっていない場合、早目に被監査会社と打ち合わせておく必要がありそうです。
まとめ
その他の記載内容の全てを検討対象とする必要はないが、職業的専門家として検討対象とすべきと判断した箇所については、それなりに詳細な検討が必要ということになりそうです。
個人的には想定以上に工数が必要になりそうだ、という印象を持ちました。前期の決算書をベースに、ある程度具体的な検討対象と作業の見込を立てておいた方がいいかも知れません。
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