IFRS第18号基本財務諸表の動向~「会計・監査ジャーナル」2024年3月号~
- 佐藤篤
- 2024年3月22日
- 読了時間: 3分
「会計・監査ジャーナル」2024年3月号の『「IFRS会計基準を巡る最新動向」開催報告(前編)』(尾方大亮)を読んでみました。
その中から「基本財務諸表」IFRS第18号を取り上げます。
IFRS第18号の新たな要求事項
「営業利益」を含む、損益計算書における新たな小計の要求
経営者が定義した業績指標(MPMs)に関する開示。企業が投資家と財務諸表の外でコミュニケーションされているものがもし財務諸表に要求される小計と合致しない場合に、それに関する定性的、定量的な情報を加える。
情報のグルーピング(集約及び分解)に関するガイダンスの強化。一般的に財務諸表の「その他」という名称の項目で多様な項目が集約されているといった情報の分かりにくさに関連する、集約と分解のガイダンスを強化する。
公表予定日2024年第2四半期、発効日2027年1月1日
認識・測定の基準ではないためボトムラインの最終数値に影響を与えるものではない。しかし、現在小計の数字で投資家とコミュニケーションをとっている場合、その数字が変わる可能性があるという点で、非常に大きな影響が生じる。
損益計算書における区分及び小計
営業、投資、財務の3つの区分を設ける。
その間の小計として、営業利益、財務及び法人所得税前利益の要求が盛り込まれている。
投資区分と財務区分に含まれる収益及び費用を詳細に定義してガイダンスを出すという形をとり、差額となる収益及び費用が間接的に営業区分を定義するという形をとる。
営業区分に、企業の主要な事業から生じない収益と費用が一部含まれてしまうという懸念が示されている点は承知しているが、投資家に一貫した分析の視点を示す観点から、このような結論に至った。
経営者が定義した業績指標(MPMs)
あくまでも損益計算書の小計に関するものであり、フリーキャッシュフローのようにキャッシュ・フロー表をベースとしたもの、その他の数値をベースにしたものは含まれない点に注意。
単一の注記の中で、①経営者の見方を反映したものであること、②報告理由とその計算方法、③IFRS会計基準で表示されている小計との調整額や調整項目の内容、④調整項目の内容を変更する場合にはその説明、を要求事項として盛り込んでいる。
集約と分解
「その他」はより情報量の多い名称を見出せない場合にのみ使用する。
できるだけ正確に名付ける(例「その他の営業費用」)
重要性がない項目を集約した金額について、その中に重要性があるものが含まれているかどうか投資家が疑問に思うほど十分に大きい場合には、追加の開示が要求される。
公開草案の際、機能別分類と性質別分類のマトリックス開示を要求したが、実務上非常に難しいとの反応があったため、最終基準では、減価償却費、償却費、従業員給付、減損損失、棚卸資産評価減の5つの項目に絞って費用を分解開示することを求めることとなった。
感想
営業利益に「企業の主要な事業から生じない収益と費用が一部含まれてしまうという懸念」は残念ながら解消されないようです。
IFRSベースで開示している企業の多くでいろいろ工夫してくれている(例.日本基準ベースの営業利益を「Core営業利益」等の名称で開示する)ので、期間比較についてはそれほど難しくないのですが、企業間比較については難があるので、もう少し何とかならないものかと思ってしまいます。
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